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命ーミコトー
5
「え?海に…藤家も…?」

 藤家が海に…?

どうしよう。全く持って想像ができない。
あの日の光に浴びたら死んでしまいそうなほどのキレイな肌が、暑い日差しの海へ?
あのインドアでひっそりと本を読んでそうな藤家が海ではしゃぐ…?


『ちょっと、榊。何か失礼なこと考えてない?』
「え!?いや、あまりにも藤家と海とが結びつかなくて。」
『俺、榊の中で本当にどういう位置づけにされてるの?』
「あはははは。」


とりあえず笑ってごまかしておいた。
それにしても…

「藤家、それ本気?」
『うん。榊を危険な目にあわせるわけにはいかないから。』
「でも、そうすると女三人の中で藤家一人だよ?」 『………』
「しかも、一緒に行く二人の友達、多分思うに藤家の苦手な部類の人だよ?」
『………』
 

藤家は黙り込んでしまった。


『…んせい。』
「え?」
『蓮見先生も狛としての役割のため、また保護者として同伴という方向でいきましょう。』
「いきましょうって…」


あなたはどんな権限があって、有里じゃないけどそう決めちゃうんでしょうか。

「ま、まあ、蓮見も大丈夫って言うなら別にいいけど。
二人とも一人や二人増えたところで何も文句は言わないだろうし。」
『分かった。ちょっと待ってて。』


藤家は電話をブツリと切った。私は藤家の強引さに呆れつつも、携帯をテーブルに置こうとした瞬間、また携帯が震えた。


「ちょっと、早くない…?」


私は苦笑しつつ電話に出た。

「もしもし、藤家?もう蓮見と交渉ついたの?一分も経ってないけど。」
『あ、うん。ちょっと脅したらすぐに。』
「え!?脅したの?」
『……言葉の綾という事で。』


これは十中八九脅したな、と思った。

「はあ、全くあなたって人は。分かった。負けたよ。
じゃあ、明日私の家に朝9時集合で。有里の家の車が迎えに来るから。」
『分かった。蓮見先生にも言っておく。じゃ。』


電話が切れて、私は少しニヤニヤ笑ってしまった。
明日が楽しみなのだ。
海に行くということももちろんその楽しみの一つなのだが、あの二人の中でうろたえる藤家も見ものだ。
ついでに、明日蓮見に何て脅されたのか聞いてやろう、と思った。


有里に承諾を得るために連絡すると、有里は大喜びしていた。
藤家のことを少し前々から気になっていたらしい。(おいおい、彼氏はどうした)


私は明日遊びに行くためにも、不本意ながら明日の分のもう1時間半勉強を続けることになった。



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