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命ーミコトー
15
『実はね、私たちは直接ミコちゃんが死んだのを見てはいないんだ。』
「え…?」

光さんが少し肩をすくめながら言った。

『だからどうも何百年経った今でも信じきれなくて。でもミコトの気配と力が無くなったのは感じた。』
『最後に一目だけでも会いたかったな…。』


光さんは遠くを見つめ、悲しそうに呟いた。
その時、うっすらと光さんと陽さんの体が透けてきた。

『もうそろそろ時間かな。体がない状態で実体化するのはやはり力を使うんでね。』

陽さんが透けている自分の手を見つめながら言った。


『あまり役に立つ話が出来なくて悪かったね。またしばらく君たちの中で休ませてもらうよ。』

そう言うと二人の姿はすっと消え、またどうやら蓮見と藤家の中へと戻っていったようだ。

するとまるでタイミングを図ったかのように、私の携帯が鳴った。

「あれ…お母さんからだ。どうしたんだろう?いつもはめったに電話なんかかけてこないのに…」

私は不思議に思いつつも携帯を手に取った。

「もしもし?」
『もしもし命!?』

すると焦ったような母親の声が聞こえてきた。いつも穏やかな母が。珍しい。何かあったのだろうか。

「お母さんどうかしたの?」
『お父さんが…!』
「お父さん…?」

ドンドンドンドン!

するとはなれの扉を思いっきり叩く音がした。何だか外でわめき散らしているような声も聞こえる。

『遅かったみたいね。』
「遅かったって何が?」
『命…』

真剣な声で何を言うかと思いきや、ファイト!と一言言い、ブツリと携帯を切られた。

「な、なんだったんだ?」

母の意味深な電話も気になるが、今気にすべきはこの現状だろう。何だかはなれの外で揉めているみたいだ。

私たちは蓮見の部屋から出て、玄関の方へ向かっていった。
すると段々と会話がはっきり聞こえてきた。

「お客様、困ります!そこは坊ちゃんの部屋でして。勝手には…」
「坊ちゃん?やっぱり男のところへいるのか!」

 何だか聞き覚えのある声である。私は嫌な予感がしてきた。

「二人ともちょっと待ってろ。俺が出てくる。」
「ちょと、蓮見…。」

 蓮見は玄関のノブに手をかけた。

 蓮見、その男の人は多分…

「すみません。俺に何か用でしょうか。」
「お前が坊ちゃんとやらか!よくも…うちの娘を…。」

ガツッ

男は蓮見に殴りかかった。玄関を出てすぐのことだったので、よろめく蓮見。

「お、お父さん!」
「命!」

 目を吊り上げてものすごい形相をしているのは、紛れもない我が父だった。

「え、お父さん…!?」

 蓮見は殴られた頬に手を当てながら、驚いたように私の父を見上げていた。
それはそうだろう。私とこの父は全く顔が似ていないのだ。

「お父さん…だと?お前は何の権利があって、私をそう呼ぶんだ。
だいたい、未成年の女子高生を自宅に誘い込むなんて…なんて破廉恥な!」

 破廉恥って…。まだその言葉使う人がいるんだ。

 父の興奮はどんどんヒートアップしてくる。

「どうせ金とその顔で娘を誑かしたんだろう!」
「誑かすって…お父さん、その人は…。」

 私が出て行って説明しようとしたときは、もう時すでに遅く、父はまた蓮見の胸倉を掴むと、先ほどよりも思いっきりぶん殴った。

 蓮見の悲痛な叫び声が、はなれ中、いや、屋敷中に響き渡った。




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あきゅろす。
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