命ーミコトー
3
本日の課題は両面印刷A4プリント3枚。終わらせたものから教員に採点をしてもらいOKをもらえ次第終了。
何としてでも早く終わらせ、素敵な夏休みライフを!と意気込んでいると、イスを後ろから蹴られた様な衝撃が。
いや、『ような』じゃなくて実際『蹴った』よね。
恐る恐る振り返ると、全てを最上級のピースで創り上げた様な整った顔立ちがこちらを睨んでいた。
「プリント」
「へ?」
間の抜けた声で聞き返すと、更に眉間にしわを寄せられた。
「だから、プリント。止まってるから早くしてくんない。」
机を見るとプリントがそこで塞き止められていた。やってしまった。
「ごめんね」
肩をすくめてプリントをまわしたが目も合わせてくれなかった。
どこかで見たことがある顔だな、と思ったけど隣のクラスの藤家 月音だった。
噂に鈍い方である命ですら、その存在は知っていた。
きめ細やかな肌はほくろ一つなく、スッと通った鼻筋と薄い唇は冷たい印象を与えていた。
長いまつげは影をつくり、真っ直ぐな黒髪はその日本人形みたいな顔を縁取っていた。
本人蓮見に負けず劣らず女の子にもてるが、いかんせん極度の女嫌い。というか人間嫌い。
いつも一人で、それが更に人々の想像をかきたてるらしいが…。
「おい榊、何ぼーっとしてんだ。てめえ、そんな余裕こくんだったら追加で…」
「ああ!すんません、すんません!やります、やりす!」
「んなら、とっととやらんかい。」
仕方ない。命は苦笑いしながらシャーペンを手に取り、問題に向かい始めた。
にしても、あれ、そういえば藤家って頭いいはずなのになんでこんな所にいるんだろう…。
「さァかァきィ〜?」
「うわー、この問題難しいなー」
あははは、とわざとらしい笑い声をあげながら命はもう一度問題に目を落とした。
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