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霞宮夜の君
2
そもそもその夜、和枝は酔っていたのだ。

大学のサークルでの飲み会の帰り、もともと酒は好きなほうではないので一次会で抜けるつもりでいたのだが…。


「よっ、和枝ちゃーん。」
「あ、経堂先輩…。」

隣に座ってきた先輩が悪かった。
からみがだるいと定評のある男、経堂敦司だったのだ。

「なんだよー、敦司先輩でいいって言ってるだろー。」
「…先輩、もう酔ってるんですか?」
「あっはっはっ、そんなわけないじゃーん!まだビールちょっと飲んだだけだよー。」

酔ってますね。
お酒弱いんですね。
そしていつもに増してだるいですね。

「まったくさー、和枝ちゃんなかなかサークル顔出さないから俺寂しいんだぜ?」
「あはは、ご冗談を。知ってますよ、経堂先輩のお気に入りは私じゃなくてミスキャンパス候補のさくらちゃんだって。」
「まあ、さくらちゃんは別格だけどね、別格。それにね、和枝ちゃんも…うーん、特に美人とか可愛いとかじゃないんだけどね、味があるんだよね。なんか癖になるっていうか…。あ、いいねー、その蔑んだ目。最高だねー。」
「は、ははは」

乾いた笑いしか出てこない。
おい、経堂、てめえ失礼なこと言ってる自覚あんのか。
味が出る顔って、するめか。するめ女なのか私は。
そしてそれで嬉しがると思っているのか、この私が。

「なんちゃってね、いや本当俺だけじゃなくて鹿江も気にしてたよ。」
「鹿江…先輩が?」


そう言われると複雑な思いになってしまう。
何を隠そう、和枝がこのそこまで興味もないこのサークルに入ってしまったのは、今経堂が言った人物、鹿江陽司(カノエ ヨウジ)が関係しているからである。


「…そんなこと言って、この場に鹿江先輩いないじゃないですか。」
「お、和枝ちゃんは鹿江狙いだったのか!」
「そういうんじゃないですけど!」

…まあ、そういうのじゃなくも、ないのか…なあ。

思わず漏れる溜息に隣の経堂は気づく様子もなく、和枝の空になっているグラスに断りもなくビールを注ぐのだった。



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あきゅろす。
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