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・13/10/30 自警団詰め所 encounter:サリア/カル
首輪は外れる事は無い。鎖も伸びる事も無い。私の居場所は此処だから、そりゃあ招かれざる客には吠えるものだ。尚更にそれが飼い主に教え込まれている芸なら、より的確に、忠実に。

悪くはない。

全てが償いの要素であるとは思ってはいない。私は人としての権利も名も取り払われた武器であるから。そうあるべくして、残された。長い刑期か、その選択。後戻りは出来ない。失敗の一つも赦されない。この左腕が私を容易く死に至らしめる。そういった首輪で。
私が或る意味はそれだけに限らない。賞金首、私もその中の一人として居て、この街との関わりにて変わった。根底は変わっていないんだろう。私は私で、全て私の意志の元に行ってきた。ただ、諦めていたんだ。だからこそ、最後に二人の元凶を殺して終わらせようとした。その二つの内の一つは、こうやって文字を書き綴っている。呑気に。生きていなければいけない、私にとっての死は、殺しは、諦めだった。

私の問いはこれからも続くんだろう。賞金首に向けて。同じような人殺しの化け物達に向けて。今貴方は、どこまで人で居るんだって。私ともう一つの元凶の境界線はどこにあったかは、分からない。けれど、そういう無効へ踏み込んだ諦めから救い出してくれた人達が、この街には居るから。賞金首のリストを見ながら、思った。

壁の修理費を持ってきたのはサリアさんだった。経費で落ちないというのも不利な点だろうけれど。猛虎隊の団員を削ってしまった、か。最もだよ。特に、仕事としてというより信念を全面に出す様な人を欠いた事は大きいと思う。
猛虎隊よりも、第六の方がっていうのは二度目でね。やっぱり、そう見えちゃうのかもしれないな。

雲慶さんの話を聞いておきたかったんだ。人斬りで、人殺しで。それでもギル君が、ラクリモーサ脱獄の際に託せるような。サリアさんが殺したような。彼も信念の人だったらしい。捕縛されるよりも、最後まで剣を握っていて欲しかったと。それはエゴだ、とも言っていた。問題行動だろう、けれど、分からないでもないんだ。

ただ、それを貫き通す為に抜けたのか。自警団を。そういう選択肢なら、どこかで。
許しはしないんだろう。私達は甘いだろうか。その線引きはとても、難しい。人各々許容は違う。その差異にすら逆らうか、従うか。

死は逃げだ。そう伝えられた。

けれど。

たった一度でいい、たったの、一度。磔にして石を投げられるでもない、それこそ死にたくなるくらいに罵倒されるでもない、馬車に括られ引きすり回されるでもない。

たったの一度。「死ぬと思わぬようなタイミングで、小蟲のように殺されてしまえ」、と、本気で願う被害者が居たのなら。償いよりもそこに価値がある気がするんだ。これは私のエゴだと、分かっている。そしてそれを肯定する事も、否定する事も、出来るんだ。

決めるのは、自分じゃない。


そんな、歪んだ。


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