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・11/07/14 メルガス盗賊団拠点 title:[赤禍ツ調査書]
(日付は2年前の夏)

【術式:名称不明、赤き禍つ呪い又は赤禍たる死撒き術、その他様々な名として呼ばれる。取り敢えず赤禍つの呪いと定義。
概要においては多段階構成による精神操作魔術。使用された様子を確認すると第一段階はお菓子に魔術を描きそれを視界に入れる事により一時起動し術式が無意識に記憶の中に刻まれる様仕組まれている。厄介なのは主に子供に対して起動させる様に仕向けている為に術式の意味を知らず解析をする事が出来ず、そして「幸せにする魔法」と言い与える事がある為。大人にはその言葉の意味は無いが、子供には或いは。第二段階は心臓から溢れ出した血から魔術式を描く。起動条件は視認する事。魔術の発動源と魔力の元は死者の憎悪に染まった血と、対象の恐怖、憎悪または狂気。自我を保ったままでありつつも殺意に目覚めるという術式であり、家族であろうと仲間であろうとその殺意を向け、理由も分からずに人を殺す奇病ともなる。
彼女の場合は完成されたものであり、お菓子屋に何度も通っていた為に細かく分解された大型術式となっている第一段階の術式を大量に受け、第二段階の術式を自らの家族の死により受けた為に恐怖と憎悪が一般の桁違いであり最も完成されたものとなる要因ともされる。
欠点は常連でなければ術式を蓄積させる事が出来ない点と、一般人の死に対して受ける心の変化である恐怖や憎悪や狂気が少ない事にある(その点を補う為に家族の死や友人の死を敢えて選んだか)。また、第一段階での術式が歪んだものであると起動時に不具合が生じる事さえある。最大の欠点としては、非常に古典的な術式である故に術者が生存している場合のみに術が発動、逆を言えば術者が亡くなった場合には術式は停止する。呪術の為に解呪を行う事は出来るが一時的なものにしかならず決定的な改善とはならない。術式の進行具合は外見にも現れ、髪の色が赤となる様な様子が見られた。度合いにより変化する様子も。彼女は尾だけと思っているらしいが、尾だけではなく背にも広がっていた。脊髄に沿う様にも。彼女自身見られない分、言うべきか悩む所だ。どうしてそんな事を知ってるか、なんてのは団員には言えない事だが。今の所、完璧な環境下で術を受けたのは二人と見られる】

【ゼルサリス=プロスメギテルス
彼女の居た町のお菓子屋さんにして父から魔術を詰め込まれ過ぎて壊れてる餓鬼。髪のあの独特の赤色から、奴も赤禍つと見られる。現在地は不明だが僅かな目撃例、目撃場所と時間を綺麗に図に纏めると円形のループする移動ルートが目に見えてくる。三年毎に一つ街を移動している事から、奴の現在地はリリアンドル、恐らくあと二年後にペティットに移住する所か。ならば、そこから更に三年経てばクロノドラ、という道が見えてくる。漸く絞り出せた。調査したアードロッド、リバルド、ラゼットには感謝するしかない。】


これが調べられる限界か。過去を詮索するのは相当な骨が折れたが、メンバーの皆が協力してくた。どんなもんだと言った所だ。

会ってから9年になる。私が威し捕え、銃の扱いと殺し方を教え(こちらの本業の狙撃手ロザリアの精度を越える程度に。相当悔しがってたが)そうして共に盗賊を続け。同じく、人を殺し罪を重ねる表情を見て漸く分かった事。

これで改正させれば、めでたく50人目。他の者達も一人一人罪の価値観が違って難しいが、この子は本当に一筋縄でいかなかった。それでも漸く見えた。
罪人で良い、それでも、生きれる方法を。もう人を殺さず生きていける方法を。私の唯一の生きるべき目的を成せる。彼女に真の悪をこれ以上背負わせない方法をついに見付け出したんだ。

花を見ると落ち着く理由も分かった。だが、それで満足してはならない。嘘は嘘だと本当に切り離し、その上で殺さない様にしなければならないんだ。

花といえば、荒波による船の運行が停止したと入ったか。向こうから出港出来ないとなれば、あの町から赤い花は届けられない。これは自身で探しに行くしかない、か。あまり良い傾向じゃないな。赤い花が無い時の彼女を、当分見てはいない気がする。だが、まだ赤き禍つは内に潜んでいる筈だ。警戒は、外せない。

彼女に原因を教える必要は無い。尾の色が抜ければ普通のどこにでも居るような女の子だ。過去に罪を重ねたとしても、もう塗り重ねる事は無いんだ。私の送り出した者達の様に、罪をしっかり背負い、そして生きていけば良い。人は誰もが過ちを犯す。殺人だろうと、他人事ではない。社会の悪と言われようが、私は人殺しの罪の上で罪を教え、罪人を白く、洗いたいと願う。
それが私の、そしてこの組織、いや、表向きな名前としては言い換えればメルガス盗賊団の、想いだ。

全て終えて、彼女がどこにも行きたい所が無いと言ったなら──

If、にしては傲慢過ぎるかな。ちょっと。

──その時には私が家族として彼女と共に居れたらな、とも、思うんだ。

家族として、か。こんな夢を持つのは良くはないのだろうけれど。だが夢ではなくなった。もう、糸口が見えている。

漸く助け





(以下に文書は無く、黒い染みが散らされ指の跡が這われいるのみ)


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