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・11/02/18 広場 encounter:ギガトール
転んだ。雨だというのに。この手帳も数ページに渡って染みてしまった。乾かしたら少し歪んでもいるが、使えないこともないだろう。
神父さんが助け起こしてくれた。あの時は思い出せなかったけれども今なら思い出せる。あの赤髪の夢魔の事を言おうと思っていたのだと。
あの時も咄嗟にこの手帳を見れば良かったのだと後悔するも後の祭りである。しかし傘を貸してもらってしまったし、ハンカチも借りてしまった。ハンカチには律儀に名前まであった。ギガトール、とあの背の高い神父の名であろう文字が。

バレンタインの期間が終わったら、返しに行こう。そしてあの夢魔の眼を見てから消えない悪夢を。

だが、私にはその悪夢から救われる権利はあるのだろうか。望んで殺して、夢の中でも殺して。その顔がこの街で出会った人達の顔だとしても私は構わず殺すだろう。
未来を見ているに過ぎない。それが悪夢と言えるのか。人殺しの事実から目を背けているだけではないのか。

本当にこの悪夢は夢魔のせいなのかすら、私にはわからない。切っ掛けに過ぎないのかもしれない。

言うか言うまいかは二の次だ。まずは、この私には無駄にでかい傘とハンカチを返すのが先決だろう。
教会は好きになれない。居る筈もない神を崇める事など、私には到底、出来やしなかった。

この世界には神は居ないか、それか居たとしても無慈悲なものだとしか私には思えない。


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