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逃げたかった。
寝息を立てる彼女を見遣る。

まだあどけなさが残る顔立ち。


...そんなことを言えるような年齢でもないけれど。




自分の使っているベッドに彼女を寝かせる。
枕元に置いてあったぬいぐるみは、近くの机に避けておいた。

邪魔くさくて。
それでも捨てられないものから、
私は逃げられない。


逃げようとしたところで、何かがある
というわけではないけれど。



ベッドから離れて、キッチンへ向かう。
冷蔵庫に残っている食材で何かを作ろうと思いついた。



...卵。
冷凍庫には、何もない。
野菜庫にも、ほとんど何もない。



たしかに、食べるのが面倒なときは何も食べないが。

ここまで
殺風景な冷蔵庫を見ることになるとは思わなかった。





...。
卵しかないから栄養があって消化のいいものなんて茶碗蒸しくらいしか作れない。


かといって、それだけ作る、というわけにも行かず
仕方なしに近くのコンビニへ食材を調達しに行くことにした。


...彼女が、寝ていてくれることを願って。





幸い、帰ってきたときも彼女は寝ていてくれた。
今日は運が良いのか悪いのかいまいちよくわからない日である。


野菜を切り、適当に煮込んで消化のいいものを作ろうと思った。
とても簡単なものしか作れないが勘弁してもらおう。


ほかほかと湯気を立てる皿をテーブルに並べ、私は彼女を起こしに行った。



「...」

軽く揺すってみる。
起きない。

「...お、起きてくださーい...?」

...起きない。

「...ご飯です!」

「え!ご飯!!!?」



そう言って、勢いよく起き上がった彼女は迷わずテーブルのある部屋へと
それこそ
逃げ出したくなるような勢いで飛んでいった。






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