[通常モード] [URL送信]

長編小説
一章
『はぁ…やっと着いた……浮世絵町っ!』
ここに来るまでの道程がとても長く感じた。
というか、本当に長かった。

電車を乗り間違え、バスを乗り間違え……
い、いやぁ、乗り間違えたばかりではないぞ?
他にもあったよ?えっと……ほら……?

あれ?やはり無かったのか?
いやいや、そんなことは…

「…い…てけ…」
あ!バイクに衝突したことがあったかも。
現代の乗り物は怖いねぇ(私も現代生まれだけど)
「おいてけぇぇ!!」
『……ん?』


横を見ると剥ぎ取りユーレイみたいな老婆(?)が池の中におり
私の着物の裾を掴んでた。

そして、池の中に引きずり込んで……
え!?引きずり込まれてる!?
『ちょっ、うぐっ、ご…ぷっ』
ヤバイって溺れる、溺れる!

抵抗虚しく意識が薄れていくなか、響き渡るような笛の音が聞こえた気がした。

「……!」
あれ。声がしてる…?
「……大丈夫か!」

体の感覚が少しずつでも、確かに戻ってくる。
『がはっ、ごほ……』
水を少々飲んでしまったらしく、軽くむせかえってしまう。

ピントの合わない視界を眺めていると、徐々に鮮明に見えてきた。

「おい、落ち着いたか?」
よく見ると、そこには黒髪の人型妖怪が心配そうに顔をのぞきこんでいた。

はぁ、はぁ。やっと、息が整った…
『…ん、はい、どうにか…』

「そうか。それにしても…見たことのない妖だな、奴良組の妖怪、か?」
さっきの心配そうな表情から、うって変わってキリっとした顔で訝しげにみてくる。

『いや…違う、はずですけど…』
曖昧な返事をしたため、眉間にシワを寄せられた。
「…では、ここでなにをしていた!」

そうだった、私は、
『あの、リクに会いに来たんです。奴良組、ぬらりひょんの孫、奴良リクオ!』

そう言った瞬間、凄い形相で睨まれてしまった。
な、なにか言ってしまっただろうか?

「…今、若頭のことを呼び捨てだったな。まさか、貴様、奴良組の敵対派の妖怪かっ!」

…………
何故にそうなった。
すごく睨まれてるし…

困っていたら、体に不思議な浮遊感が!?
視界がぐるりと反転し、土の地面が見える。

『……はい?』
「…………。」

なにやら、私は今、肩に担がれているらしい。
いや、どう考えてもおかしいでしょ。
初対面の人(いや、妖か?)にいきなり肩に担がれる。

無言でその妖怪は夜の空に飛び立った。

ちなみに今、二つ、新たに気づくことがあった。
この黒い翼や、服装からして、この妖は…

奴良組のお目付け役、烏天狗一族だと……!


そして、何処に連れていかれるのかをを聞いてなかったこと。

いくら、問いかけても、闇夜に自分の声が虚しく響くだけだった。



あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!