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双子がドラマにでるようですC

!某神曲パロ入ります。好きな方は注意!











「アドレサンス?」


メイコさんに渡された楽譜と台本にはそう書かれていた。


「今、とっても人気のある漫画らしいの。それを実写化するみたいよ、あんた達で」

「ふぅん。実写化って大体転けるのがオチなのに懲りないのかしら?」

「ちょっと。役者がそんなこと言ってどうするの!しかもやる前から!」

「冗談だってば!」


ちょっぴり怒りの隠った声色にビックリして、私はアハハと笑いながら誤魔化す。


「ところで、レンくんとはどうなの?」


レンと…?
えっ?


「どどどどうって?」


顔が急に熱くなる。
オマケに凄くどもってしまい、とても恥ずかしい。
これって付き合ってるとかそういう類の質問じゃないよね?
私の頭の中で疑問がぐるぐる渦巻いている。


「レンくんと話したりするの?これから一緒に仕事をするのに仲が悪いじゃ話にならないわよ」


…ああ、仕事上のことね。
さっきはとってもビックリした。
はっきり言って心臓に悪い。


「この前アドレス交換してメールしたりしてるよ」


そう答えるとメイコさんはニヤニヤしながらふぅん、と言ってジロジロこちらを見てくる。


「なっ、なに?!」

「ううん、仲良くなったんだなぁと思ってね。レンくん、良い子だったでしょ?」

「う…うん。まぁね」


連絡先を交換した夜、早速彼からメールが届いた。
絵文字に慣れていないようで、似たような顔が並んでいるメールだった。
でも一生懸命さが伝わってくる。
それがなんだか可愛く思えて、彼が人気な理由が判る気がした。

その夜から今日まで、メールが止まることはなかった。
もう既に何十通も交換している。
内容は今日の仕事だとか食べたものとか、そんな日記みたいな事ばかり。
いつの間にか彼からのメールが楽しみで仕方がなくなっている自分に気づいた。
レンを知れば知る程、レンを―――

…ううん、違う。
私は彼を好きな訳じゃない。
好きだけど、ちょっと違う感情。
これは、何だろう?


「…どうしたの?」


突然の声にハッとし、我にかえる。
目の前には心配そうに顔を覗き込むメイコさんの姿があった。


「レンくんと、何かあったの?」

「ううん。何もないよ」


しばらく間があったせいか、変に勘ぐられている気がする。
私は当たり障りのない返事をし、強制的に話題を変えた。


「そんなことより、今度のスケジュールはどうなってるの?」


メイコさんはちょっと納得いかない顔をしながら赤い手帳を開くと、パラパラとページを捲る。


「明日が記者会見ってことでキャストの発表があって、その三日後にリハーサルと曲の練習、来週から撮影・レコーディング開始よ。詳しくはこの紙に書いてあるから目を通しといて。」


ペラペラと喋った後、20枚はあるだろうと思われる今後のスケジュールを渡される。中をパラパラと見ると裏表ぎっしりと事細かに今後の予定がかかれていた。
…流石メイコさん。
仕事が早い。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして。リハーサルは来週からだから台本、しっかり読んで置きなさいよ」


私は笑いながらわかってる、と答えると胸の前で親指を立て、オッケーのサインを出した。



 * * *




家に着くとベッドに身を沈め、早速台本を開いてみる。
台詞を目で追い、自分なりに雰囲気を構想していく。

これが私で相手役は…


レンという名前思い浮かべる。
すると同時に、頭の中のストーリーがレンと私に置き換わってしまった。
本当にそうなのだから、当たり前といえば当たり前なんだけど…
なんか…
ね?
胸がこう、なんていうのかな?
熱くなるっていうか…
恥ずかしいに近い気持ちになってきた。

最近の私はなんだか変。
自分でそう思うのだから、きっと本当にそうなのだろう。

うーっと変なうなり声をあげながら枕に顔を埋める。
誰に顔を隠すつもりもないのにね。

ヴー…ヴー…
枕の横に置いていた携帯電話がチカチカと光ながら振動している。
バイブの長さからしてメールだろう。

画面を見ると、そこには鏡音レンと表示されている。
私は急いで受信ボックスを開いた。



台本、もう読んだ?



本文にはとても簡潔な文章。
私は、今読んでるところ、と打つ。
すると5分もしない内に返事が来た。



よかった!
まだ起きてたんだ!
電話してもいい?



…電話…か。
まあ、いいよね。

いいよ、と返事をすると直ぐに向こうから電話がかかってきた。



「もしもし?」

『リン?お疲れ様。遅くにごめんな』

「ううん、いいよ。どうしたの?」

『ドラマのことでさ。俺、こういうの初めてだから不安で。リンはどうかと思って』


そんなの、私も不安に決まってる。


「私も初めてだから色々心配なことはあるけど、なんとか成功出来たらって思ってるよ」

こう答えるとレンは『そうだよな、俺もまったく一緒の気持ち』と言って笑った。

それからドラマの内容について色々話をした。
配役だとか、原作を読んだかだとか、終わりのシーンについてだとか…たくさん話をする。気がつくと通話し始めてから2時間は経過していた。やっぱりレンといると時間が短く感じる。


「あ、もうこんな時間」

『本当だ。話に付き合ってくれてありがとな。明日も早いだろうに、ごめん』

「ううん、こちらこそ。楽しかった。ありがとう」


私は思ったことをそのまま、素直に言葉にした。


「じゃあ、そろそろ切るね」

『ちょっと待って!』

おやすみ、と言おうとすると、レンに言葉を遮られた。

『あの…さ、よかったら…でいいんだけどさ。』

「うん?」

『ドラマが終わるまでリハ以外の時間にも2人で練習しない?曲とかさ』


今までよりちょっと控えめな声。
練習…か。


『や、本当に良かったらでいいんだ!嫌なら嫌っていってくれていいから!』


誘うときより今の声の方が声が大きい。
…誘いたいのか誘いたくないのか。
そう思ったら笑えてきた。
笑いを堪えつつ、


「いいよ。お願いします」


と返事をする。
与えられた仕事はキッチリこなしたい。
とは言っても多分1人では限界があるだろうし…。
練習相手はいた方がいいに決まってる。
むしろ私からお願いしたいくらいだ。


『本当に?ありがとっ!じゃあ詳しくはまたメールするから!』


受話器越しに嬉しそうな声が聞こえる。


「うん、待ってるね」


そう答え、オヤスミ、と続け通話を終了させた。



 * * *



リハーサルが始まって2日目。
思ったより演技が上手いと思ったからなのか、周りからは好評だ。
電話した夜の次の日から、お互いマネージャーに隠れ、2人きりで練習をした。
最初は台詞を読むのがやっとで、演技に対して恥ずかしがる隙もなかった。最近やっと感情だとかを考えられるようになってきたばかりだ。

感情を込めれば込めるほど、周りから褒められた。
私はそれがうれしくて、その役になりきろうと思った。
そして役になりきろうとすればする程


―――いつの間にかレンの姿を追っている自分に気がついた。



今考えれば、それは今始まったことではない。
連絡先を交換した日から、私はレンを気になっていた。
ただ、私はそれを好きとかそういった類の感情ではないと思っていた。

しかし、それは違った。
役になりきればなりきる程、私と主人公の感情が一致しているのだ。
その、主人公の感情というのが


「…っ、離れたくない…!好きなの!」


恋という感情でした。




カーット!と叫ぶ声と同時に周りが動き出す。


「いやぁ、今の良かったよ!やるねぇ、リンちゃん」


そう言いながら監督は私に寄ってきた。
そして


「本当に誰かを好きじゃないと、あんな風に言えないよ〜。リンちゃん、恋してるでしょ」


と続けた。


「えっ」


あまりにも急なことだったので、私は顔がボッと熱くなる。心を見透かされてる…?!


「ち…違いますよぅ!」


私がそう言うと監督はハッハッハッと笑いながら「冗談冗談」と答えた。
…絶対に今のは冗談じゃなかった…


「まあ、本番もこの調子で頼むよ」

「はい!」


誉められたことには変わりないんだ。
…うん。よし、がんばろう!
改めて心の中で決意をし直すと


「リン」


と後ろから声がした。


「あ、レン」


振り向くとそこにはドラマの相方の姿。
私は声の主…レンの側まで駆け寄る。


「褒められたじゃん。よかったな!」


ニコッと笑ってレンは私を応援してくれた。


「うん!レンのお蔭だよ!毎日練習付き合ってくれてありがとう!」

「それは俺も言わなきゃいけない台詞」


その言葉にふふ、と笑うとレンも笑った。


「あ、あのさ」

「ん?」

「さっきカントクが、恋してないとあんな演技できないって言ってたけどさ…リンは今、誰かに…その…恋とかしてるの?」


レンは眉をハの字にして尋ねる。
ああ、ついさっきの会話か。
聞いてたんだね。


「監督にはしてないっていったけど…」

「けど?」

「してるよ」

「えっ?誰っ?!」


相手の血相が急に変わる。

レンだよ、って言ったら君はどんな顔をするかな?

…なーんて。
今はまだ、この関係を崩したくない。


「なーいしょ」


ちょっと意地悪な笑みを浮かべて彼に言うと、「いつか教えてくれよ?」と納得のいかなそうな顔で言われた。


私の気持ちは、このドラマが成功したら、


…きっと、ね?






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あきゅろす。
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