つばさ様へ。イケ(?)リン×レン 学パロ。他人設定。 俺が今、付き合っている彼女はクラス…いや、学年中の人気者。 勉強やスポーツは勿論、性格だって明るく優しい上、顔だって誰よりも可愛い。完璧超人と言う言葉はこの人のために存在するのだと疑いたくなる。 そんな彼女の隣人であり幼なじみであり彼氏である俺は、何もかも普通のどこにでもいる高校生。 なぜ俺みたいな至極普通の男が彼女のハートを射止めたのか? そんなの俺が聞きたいくらい。 幼少期から今までずっと一緒にいたから感覚が麻痺してるんだな、きっと。 どちらから告白したわけでもなく、高校に入学するくらいに自然とそんな雰囲気になって今に至る。 付き合ってるとは言ってるけど、まだキスしたこともなければ手だって繋いだことはない。 本当にこれで"付き合っている"と言えるのか若干不安な気持ちはあるが、別に手を繋いだりキスをしたりするのが目的で付き合っているのではなく、隣にずっと居て欲しいからだというのはお互い言わなくても判っているので、別にそれに対しての不満は一切ない。 一番付き合っていると主張出来るような行動と言えば、一緒に登下校することくらい。 でもそれは幼稚園からずっとそうだったので、今更その時間に特別な意味を感じないけれど。 他にはと言うと、たまに部屋に行き来するくらいか。 音楽を聴いたり漫画の貸し借りをしたり。 "恋人"や"友達"といった特別な言の葉は、その時間に存在しない。 そんな何でもない時間が俺は凄く好きだったんだけど、最近彼女は忙しいらしく、登下校も最近一緒にしていない。 何でも文化祭が近いので委員会の仕事があるだとか。 今日だって朝早くに家に来たかと思えば、『日直だから今日は先に行くね』とだけ伝えに来て1人でそのまま学校に行ってしまった。 …そんなのメールでくれればいいのに。 (律儀な奴) もしかして、俺に会いたかったから? なーんて甘いことも考えてみたけど、リンの顔を思い浮かべてみたらそんな考えは一瞬にして消えてしまった。 いくら恋人のような感覚が無いとは言っても、俺は彼女の一番でありたいし、嫉妬したりすることもある。 彼女の悲しい顔を見るのは辛いし、楽しそうな顔をすれば俺も嬉しい。 結局、俺は彼女にベタ惚れって訳です。 ヴー…ヴー…と、机の上の携帯電話が振動する。 帰りのホームルームも終わり、荷物を纏めていた時のことだ。 携帯電話を開きメールを確認する。 送信者名には『リン』という文字。 リンの新着メールを選択し、本文を表示させる。 本文 : 今日は一緒に帰れるよ。 ちょっと遅くなるかもしれないけど、教室で待っててくれる? 返信ボタンを押して了解とだけ打った文章を送信する。 パタンと携帯電話を閉じる机の上に置く。 椅子に浅く腰掛けると、だらりと背もたれに背を預け、リンが来るのを待った。 教室内にいた人が全て掃けだした頃、静かになった室内とは反対に、廊下の方でパタパタと忙しない音が聞こえてきた。 ああ、来たな。 そう思いドアの方に目をやると、ガラリと勢いよく開く。その向こうには息を切らした愛しい彼女の姿。 「ごめんっ、遅くなっちゃった!」 ハァハァと肩を上下させる彼女の元へ歩み寄ると、背中をさすってやる。 「そんなに待ってないよ。落ち着いて」 リンは一所懸命に息を整える。 彼女が落ち着くまで俺は背中をさすり続けた。 「どう?大丈夫?」 「落ち着いてきた。ありがとう」 リンは顔をあげるとニコッと微笑む。 その笑顔は反則です。 お陰で俺の顔が熱くなるのが分かった。 照れくさいのでリンの荷物を奪い、行くぞ、と言って教室を出た。するとリンは相変わらずニコニコしたまま俺の後についてきた。 俺の右肩には2人分の荷物。左には行き場が無く、結局ポケットの中に落ち着いた手。そしてその手の横にはリンがいる。 手、繋がない? その一言がなかなか言い出せない。 それが目的で付き合っているのではないのだけれど、好きな人にはやっぱり触れていたいし、温もりを感じたくなるモノだと思う。 リンに触れたい。 最近になってその衝動が大きなものとなってきた。(今までも勿論あったけど) 昇降口に近づいてきている。 外に出る前に、自然に、自然に。 ほら、言わないと…! 「なぁ、リン」 「ん?」 名前を呼ぶと、こちらに顔を向けた。 目と目がばっちし合ってしまい、恥ずかしくて視線をそらした。 「あのさ、…手「あ!」 急に言葉を遮られたので何かと思い、リンに視線を戻す。どうやら彼女は俺より更に奥の方を見ているようだった。 「雨だ」 「まじで?」 振り向けば、彼女の言葉の通り雨がザァザァと降っている。教室を出たときは気付かなかった。きっと、ここに来るまでの短い間に突然降り始めたのだろう。 「…どうしよう。私、傘持ってない」 リンが隣でうーん、と唸る。 しまった! 俺も持ってない。 確かに天気予報では高めの降水確率だったが、朝は雨が降るなんてありえないくらい晴れていたので傘は置いてきてしまったのだ。 「俺も「持ってきた?」 また言葉を遮られた。 否定しようとしたら、今度は言うより早くリンに俺の鞄を奪われ、中を漁られた。 「おい、リン?」 「あった!」 …あった? 何が?傘が? そんなまさか。 しかしリンの手にしている物は、紛れもなく俺の折りたたみ傘。俺、入れた覚えはないんだけど。 「さっすがレンだね!」 「お…おう」 状況がイマイチのみこめないまま勢いに任せて返事をしたものの、本当にこの傘を入れた身に覚えがない。 今朝の状況を思い返す。 確か制服に着替えて、荷物を持ってリビングに行ったんだ。それから鞄に弁当をいれて玄関において、ご飯を食べてたらリンが来た。 それから日直だから先に学校に行くと言ったので俺は判ったと伝えてリンを見送った後、朝食の続きをとったんだ。 で、ゆっくりしすぎて遅刻しそうになって急いで学校に向かったんだっけ。 …おや。 いつもと違う点が一点。 その時は大して気にしなかったけど、なんでわざわざリンは家まで直接言いにきたんだ? メールを送れば早いのに。 ―――犯人が判明。 何にも気付いてないと思っているリンは俺を褒め称える。そんなリンが健気で可愛くて、愛らしい。彼女は頭はいい癖に、こういう計算は苦手らしい。 俺はとっくに気付きましたよ、リン。 「レン」 「ん?」 「傘、一緒に入っていいかな?」 じっ、と俺を見つめるエメラルドグリーンの大きな瞳に長い睫。 そんな目で訴えられたら… 「もちろん」 そう答えるしかないじゃないですか。 傘を開き、リンに中に入るよう促す。 「て」 「ん?」 傘の下。 隣にいる彼女が何やら呟いたので俺はリンを見る。 「繋げなかったね」 今度はハッキリ聞こえた。 ―――手、繋げなかったね。 俺もとんだ鈍感野郎だったみたいだ。 手を繋ぎたい、なんてリンに伝わっていないと思っていましたから。 「うん」 「晴れたら、繋げるのにね」 「…うん」 「雨じゃないときは繋ごうね?」 「うん」 きっと今、俺の顔は真っ赤だ。 凄く熱いのが自分でもわかるから。 「だからさ」 リンとの距離が急に縮まる。 もともとそんなに離れてはいなかったけど、ピッタリくっついてきたのだ。 「今日は、これで我慢してね?」 傘を持っている方の腕に、リンが自分の腕を絡めてきた。 「うん」 体中は沸騰しそうだけれども、周りの雨がきっと冷ましてくれるだろう。 もう、ずっと雨でいいよ。 ぼんやりとそんなことを考えながら、しとしとと降り続ける雨の中を2人で歩いた。 手と手と +++ promised.のつばさ様へ相互お礼文。 レン君視点なのでわからないけど実はレン君も人気者の設定。 相互リンク&リクエスト ありがとうございました! [*前へ][次へ#] [戻る] |