txt 昼飯の話(来神時代) ・来神時代 ・静雄と臨也がそれなりに仲良し 「シーズちゃん、昼飯一緒していい?」 食パンをもそもそ食べていると、弁当袋をぶらぶらさせながら、臨也が屋上へやってきた。 激しい喧嘩で有名な俺と臨也だが、それは臨也が俺の癇に障ることを言い、それに俺がキレた時の話。 何もなければ、こうして昼飯を供にするくらいはする。 「おう。勝手に食ってけ」 「お邪魔しまーす、っと。あれ、シズちゃん今日食パン?」 「お袋が寝坊して準備する暇なかったんだと」 「…ふーん。残念だな、ちょっと卵焼き楽しみだったのに」 「お前あれ好きだよな」 「だしが美味いんだよ、シズちゃん家の卵焼き」 カポッと自分の弁当箱を開け、手を合わせながら臨也は言った。隙を見て奪われて以来、臨也はウチの味付けをいたく気に入り、よくおかずの交換を頼んでくるのだ。無理矢理。 臨也は少し肩を落として、箸で人参のグラッセを刺した。 「はい、シズちゃんあーん」 「は?」 「だから、あーんだって。口開けてよ」 「な、っ」 「えいやっ」 突然のことに驚いて思わず声をもらすと、その開いた口に人参を突っ込まれた。 臨也は満足気に箸を抜き取ると、弁当を頬張りだした。 「なんなんだいきなり…美味いけど」 「ならいいでしょー。食パンオンリーなシズちゃんに俺からのお裾分けだよ」 臨也はハンバーグを口に運びながら言う。 お裾分けってな… …そういえば、と俺は前々から思っていたことを口にしてみる。 「…そういや手前、俺にしょっちゅう人参食わすのは何でだ?」 「………、え」 臨也はあからさまに動きを止めると、若干気まずそうに視線を彷徨わせた。 箸は無意味にカチカチと音を立てている。 「…いーざーやーくーん?」 「……あは、は」 今まではさして気に留めていなかったが、コイツ俺を上手いこと使ってたんじゃなかろうか。 微妙にイラッとした俺は臨也を緩く羽交い締めにして問い詰める。 「手前あれか、ベタに人参嫌いとかそういうアレかよ」 「シズちゃ、締まる!ちょっと離して!」 「否定しないってことは事実なんだな?」 「だ、ってドタチンが、なんかやたら怒るんだもん…!」 涙目で訴える臨也にほだされそうになるが、苛つくので止めはしない。 痛い痛いシズちゃんギブと腕を叩いてくるが、止めはしない。 そうこうしているうちに、また屋上の扉が開いて俺達のよく見知った顔が現れた。 「お邪魔するよー、って君たち何じゃれあってるんだい」 「今度は何したんだ臨也…」 やはりと言うか、現れたのは新羅と門田だった。二人は俺達の傍に腰を下ろし、弁当を広げる。 臨也は 問答無用で俺の所為なの!? と喚いたが、日頃の行いの所為だと思う。ざまあみろ。 「別に大したことはしてないよドタチ…」 「弁当に入ってた人参俺に食わせやがったんだよコイツ」 「って何バラしてんのシズちゃんんんん!!」 誤魔化そうとしていたようだが、退路を断ってやる。ちらと門田を見ると、眉間に皺を寄せていた。 「…臨也、詳しく」 「っ…シズちゃんのバカあああ!!」 「あ、こら、臨也!」 臨也はひくりと顔を引きつらせ、俺の腕を振りほどき、脱兎の如く逃げ出した。 ――もう一度言おう。 ざまあみろ 「ていうか臨也が人参嫌いなこと今まで気付いてなかったの、静雄」 「……うるせぇ」 +++ 仲いいこいつらが書きたかっただけです。 完成までだいぶ日が開いてしまったので構想確実に変わってる…荒削り… 20110508 ← [戻る] |