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小説
【02】

表彰式からもう二日が経っていた。

――あぁ、まただ。

私は白いパレットに絵の具を引いた。
薄く広がる鮮やかな水色。

「あー‥もう」

――なんなんだろ、これ。


目の、不快感。
上手くは説明できない。
別に痛いわけじゃないし。
でも なんか、なんか変。

しばらく手で目を抑えてると『なんか変』はなくなった。
瞼をゆっくり上下に動かす。

「ん、大丈夫」

明日あたりに目医者に行って来よう。
私は誰もいない教室で一人頷いてからまたパレットに視線を移した。



―――はた、と手の動きが止まる。

真っ白なパレットの上。
さっきまでは薄くて綺麗な空色があったはずなのに。

そこにあるのは暗い、灰色。

「え……?」


瞬きを何度かする。
でも絵の具の色はずっと灰色で。


「……なに…?」

ゆっくりと教室を見回してみる。
いつもだったら傾いた夕日が差し込んでいるのに。
そこは、灰色、黒の世界。


―――なに?なんなの!?


「や、だ……いやぁぁ……いやぁぁぁ!!!」


傍にあった絵の具のチューブが転がる。

机も、椅子も、
すべて灰色。


やめて、やめてよ。



夏休みも近い、蒸し暑い日の夕方。




私は『色』を失った。






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あきゅろす。
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