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■夕日の向こうに SIDEリカルド
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 久実が側に居る・・・その事実は喜ばしいこと。

 だからといって、ずっと一緒にいられるわけではない。明日も練習はあるし、土曜は試合だし。

 でも、タイミングのいいことに、久実の親友がリバプールに仕事で来ていて、土曜はその友人と会うと言ってたから、ずっと1人で・・・てことは回避できた。

 それでも、明日はいきなり1人にしてしまうことになるけど。

“リカルドが謝ることじゃないでしょ?私がいきなり来たんだから。会えないことも、覚悟してきたから、今ここでリカルドの家にいるだけでも、私は幸せよ。”

 久実はそう言って、俺の顔を覗き込む。

 俺はそんな久実をぎゅっと抱きしめる。そしてキスをする。

“おいで。”

 俺は久実の手を引き、寝室へ連れて行く。ちょっと強引に。いつもより早い鼓動に、足を合わせるように。

 俺はベッドに腰掛け、目の前に立つ、久実の両手を握り、顔を見上げる。

 うつむいた久実の顔からは緊張しているのが目に見えて分かる。そして、ほんのり頬が赤い。

 かわいい・・・。

 久実の両手を少し強めに引くと、バランスを崩した久実が、俺の胸へと倒れこむ。

 その久実の体を抱きしめ、キスをする。軽いキスではなく、深く、甘く、息が苦しくなるようなキス。

 そのまま、久実が下になるように2人でベッドに倒れこむ。

 首筋に口付けしながら、着ている物を脱がしていく。少しずつ、久実の白い肌が現れる。

 久実の心はもちろんのこと、この白い肌も、体も、全て俺のものにしたい。

 欲張りな俺の要求に対して、久実は恥ずかしそうに首を縦に振る。

 久実のかわいらしい表情が、艶のある表情へと変化していく。

 深く、深く愛し合い、久実を離さぬよう両手に抱きしめ、眠った。
 



 次の日、久実に起こされた俺が見たのは、すでに出来上がっている朝食。それを頂いてから、練習へと向かう。

“悪い人が来ても、開けちゃダメだよ。”

 俺が冗談で言うと、久実は頬を膨らませて、

“子供じゃないのに。”

と、拗ねる。そして、あのやわらかい笑顔で、

“でも、ありがとう。気をつけてね。”
と続ける。

 そんな久実の笑顔に送り出された俺は、練習場に着くなりチームの上層部に状況を説明した。それからチームで唯一の日本人に、

〈アツシ、後で教えてもらいたいことがあるんだけど、いいかな?〉

と頼みごとをした。日本語を教わろうと思って。

 久実の両親と話すときに、日本語で話ができた方が、少しは距離が近くなるんじゃないか、と思って。

 練習が終わってアツシに事情を説明すると、

〈最近、ちょっと落ち着いたと思ってたけど、そういう訳だったんだな。〉

ニヤリと笑って言う。

 そんなアツシから、ある言葉の日本語の発音を教わり、いざ日本へ。


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あきゅろす。
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