■夕日の向こうに SIDEリカルド
9
久実が側に居る・・・その事実は喜ばしいこと。
だからといって、ずっと一緒にいられるわけではない。明日も練習はあるし、土曜は試合だし。
でも、タイミングのいいことに、久実の親友がリバプールに仕事で来ていて、土曜はその友人と会うと言ってたから、ずっと1人で・・・てことは回避できた。
それでも、明日はいきなり1人にしてしまうことになるけど。
“リカルドが謝ることじゃないでしょ?私がいきなり来たんだから。会えないことも、覚悟してきたから、今ここでリカルドの家にいるだけでも、私は幸せよ。”
久実はそう言って、俺の顔を覗き込む。
俺はそんな久実をぎゅっと抱きしめる。そしてキスをする。
“おいで。”
俺は久実の手を引き、寝室へ連れて行く。ちょっと強引に。いつもより早い鼓動に、足を合わせるように。
俺はベッドに腰掛け、目の前に立つ、久実の両手を握り、顔を見上げる。
うつむいた久実の顔からは緊張しているのが目に見えて分かる。そして、ほんのり頬が赤い。
かわいい・・・。
久実の両手を少し強めに引くと、バランスを崩した久実が、俺の胸へと倒れこむ。
その久実の体を抱きしめ、キスをする。軽いキスではなく、深く、甘く、息が苦しくなるようなキス。
そのまま、久実が下になるように2人でベッドに倒れこむ。
首筋に口付けしながら、着ている物を脱がしていく。少しずつ、久実の白い肌が現れる。
久実の心はもちろんのこと、この白い肌も、体も、全て俺のものにしたい。
欲張りな俺の要求に対して、久実は恥ずかしそうに首を縦に振る。
久実のかわいらしい表情が、艶のある表情へと変化していく。
深く、深く愛し合い、久実を離さぬよう両手に抱きしめ、眠った。
次の日、久実に起こされた俺が見たのは、すでに出来上がっている朝食。それを頂いてから、練習へと向かう。
“悪い人が来ても、開けちゃダメだよ。”
俺が冗談で言うと、久実は頬を膨らませて、
“子供じゃないのに。”
と、拗ねる。そして、あのやわらかい笑顔で、
“でも、ありがとう。気をつけてね。”
と続ける。
そんな久実の笑顔に送り出された俺は、練習場に着くなりチームの上層部に状況を説明した。それからチームで唯一の日本人に、
〈アツシ、後で教えてもらいたいことがあるんだけど、いいかな?〉
と頼みごとをした。日本語を教わろうと思って。
久実の両親と話すときに、日本語で話ができた方が、少しは距離が近くなるんじゃないか、と思って。
練習が終わってアツシに事情を説明すると、
〈最近、ちょっと落ち着いたと思ってたけど、そういう訳だったんだな。〉
ニヤリと笑って言う。
そんなアツシから、ある言葉の日本語の発音を教わり、いざ日本へ。
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