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■夕日の向こうに SIDEリカルド
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 イギリスに戻り、チームに合流する。

 すでにパトリシアとケンカ別れしたことは、ゴシップ紙に抜かれていて、

〈相変わらず、リカルドは長続きしないね。〉

 チームメイトの高木敦志の妻、春菜にため息交じりに言われた。

〈いいんだよ。向こうだって俺のこと、飾りとしか見てなかったんだし。〉

 そう。それに、今は久美がいる。

 電話では連絡を取っている。ただ、時差も9時間あるため、お互いが相手の時間を気にして、連絡を取っているんだが。

 あの笑顔を見たいけど、今は我慢しよう。

 そばにいてほしい・・・とは思う。

 でも、今イギリスに呼んでも俺がずっとそばにいられるわけではない。リーグ戦のホームゲームならともかく、アウェイ戦や代表戦となると、家を空けることもしばしば。そうなると、久美を慣れない土地で1人で居させることになってしまう。

 たしかに、言葉には不自由しないだろう、英語圏だし。でも、知らない土地で1人より、住み慣れた日本にいる方が何かと安心できる。久美も・・・俺も。

 久美はしっかりしてないわけではないが、何となく、目が離せない。まぁ、初めて会った時、ポルトガルで道に迷ってたってものあるのだろうけど。

 俺が日本に行ければいいのかもしれないが、そんな時間は取れない。行ったはいいが、すぐに帰ってこなければならなくなる。久実は「会いたい」と言うのは時々口にするが、「会いに来て」とはけして言わない。今は時間が取れなくて、日本に行くのは難しいということを伝えたから。

 会いたい気持ちを我慢している久実を思うと、悪いと思うと同時に、嬉しくも思う。俺のために、俺のことを思って、寂しいのを我慢してくれている。

 ヒースロー空港で別れて、次に会う約束も出来ていない。しばらくしたら、久実をイギリスに呼ぼうとは思っているけど、まだ具体的な話にはなっていない。

 それでも、久実は俺を信じて、再開できる日を待ってくれている。

 久実は、隠れて遊ぶような女ではない。だから、俺も。

 久実にバレないのをいいことに遊んでいたら、いつまでたっても、「女癖の悪い奴」というレッテルは消えないし。

 それに、久実と出会ってから、他の女を抱きたいとは思わなくなった。

 抱けない・・・わけではない。むしろ、久実を抱くことを考えれば、他の女の方が簡単に抱けるだろう。

 でも、他の女に行こうとは思わない。

 久実に触れさせていない俺の体を、他の女に触らせるのはもったいない。

 ・・・まぁ、あの日の、俺のふがいない結果のおかげ、かな?


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