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■夕日の向こうに SIDEリカルド
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 そして、あの久実と出会った日に行われるはずだったパーティへ向かう。・・・久実と一緒に。

 訳も分からず連れてこられた久実は固まってて、それを面白がったチームメイトが久実をてがう。

“フェル、どこで誘拐して来た?”

“手、出したら犯罪だろ?”

なんてチームメイトは口々に言う。

“誘拐してないし、手だって出してないし、何より、俺より年上だ。”

俺が言うと、チームメイトは驚いた声を上げる。まぁ、誘拐は冗談として、その後の2つか。

“お前が手を出さないって、どこか悪いのか?それとも遊び過ぎで不能になった?”

 ジョアンが意地悪く言ってくる。

“ジョアン、余計なこと、久美に言うなよ。”

 俺はそう言って釘をさす。この中で、一番英語を話すことができるのがジョアンだからだ。

 ポルトガル語の会話は、久美は聞き取れないからいいとして、英語は俺より久美の方が堪能だ。ああ見えて、英語を武器に仕事をしていたらしいから。

 久美はいまだに俺がサッカー選手のリカルド・フェルナンデスということに気づいていない。てことは、俺の過去も知らないわけで。

 サッカー選手ってことがバレるのは構わない。でも、それと一緒に俺の過去の女遍歴までバレるのは・・・怖かった。

 あの、久美の笑顔が見れなくなるような気がして。

 どこまでも隠し通せるものじゃないとは思ってる。でも。できることなら、余計な情報は久美に与えたくない。

 まあ、世界的に有名なポルトガルキャプテンが挨拶しても、気がつかない久美のこと。しばらくは大丈夫だろう。その前に、久美が俺から離れないようにすれば・・・。

 その日の夜は、リスボンでも超高級ホテルのスウィートに泊った。

 俺は明日イギリスに戻るし、久美は日本に帰るから。イギリスに連れて行きたいのは山々なんだけど、久美を心配している日本の両親に、久美の笑顔を見せてあげるのが、先だと思った。おれの両親と一緒に過ごして、久美が自分の親のことを気にしているのがわかってたから。

 同じ部屋に泊まって、今度こそ・・・と思っていたのに、タイミングが分からない。

 会話が盛り上がっていたのもあるが、いざ、行動しようと思うと、切り出せない。

 たぶん、もう大丈夫だとは思う。今、手を出しても、久美の笑顔を失うことはないはず。そう思っていても、初めての時のように心臓が跳ね上がり、切り出せない。

 ・・・女なんて、誰でも一緒だと思ってたのに。




 ・・・結局、手を出さずに、朝を迎えてしまった。
 俺のもの・・・にしたかった。出来なかった・・・というのは、ふがいない結果だろうか?

 その前に、久美は俺のことをどう思っている?好きだから、ついてきてくれるのか、誰でもいいからついて行っているのか。

 久美が、俺のことを好きでいてくれたら、イギリスと日本とで遠く離れても、やっていけるかもしれない。

 俺は、久美を手放したくない。

 ヒースロー空港での別れの時、久美の首にネックレスをかける。俺の想いを、日本に持って帰ってもらうため。決して高価なものではない。土産物で選んだもの。

 それでも、素直に嬉しいと言ってくれる久美が愛おしい。

 お互いの気持ちを告白しあって、2人の気持ちが通じ合って、その後に待ち受けているのは、物理的な別れ。

 さよならではなく、再開を誓うキスを交わす。

 涙をいっぱいためて、泣かないように努力している久美はいじらしくて、かわいい。

 本当なら、手放したくはなし。

 でも、現時点でイギリスに連れて帰るわけにはいかない。久美の家族のこともあるけど、イギリスに来れば、嫌でも俺の過去を知ることになるだろうから。

 もう少し時間がたてば、なかったことにはならなくても少しはマシになるかもしれない。・・・そんな俺の都合だけど。

 それでも、久美の笑顔を失いたくはなかった。


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あきゅろす。
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