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■夕日の向こうに SIDEリカルド
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 ・・・結局、最後までロクなプレーは出来ずに練習終了。

 コーチには『次もやったらレギュラー外す!』と散々絞られて。

 チームメイトには、

「やっぱりメンタル面弱いな・・・ある意味。ていうか、気にしすぎだ。」

とからかわれて。

 イライラしたりすると、すぐそれがプレーに出てしまうのは、俺の昔からの悪い癖。そのことも自分で判っているんだけど、それをコントロールするのが下手なだけで。

 最近は、そんなプレーをすることもなかったし、克服できた、って思ってたけど・・・ただ、ずっと調子が良かっただけなのか。

 そう、あらためて思って、ヘコんだり。

 まったくスッキリしない状態で、練習場を後にした。



 ホテルの自分の部屋へ行くより先に、足は久実の部屋へと向かう。

“お帰りなさい。お疲れ様。”

 そう笑顔で迎えてくれる久実を抱きしめ、

“今日、話してたの、誰?”

と、俺は言う。久実はちょっと困った顔で話し出す。

“日本の友人。雅恵や、山下さんと同じ会社なの。新婚旅行でドイツにいるんだって。キャプテンのファンで・・・。”

 久実がそこまで言った時に、俺は思い当たる人物が浮かび上がった。

“バカヤローの・・・奴?”

 久実の元婚約者。

 久実に近づかせたくない一番の人物だし、俺が許せない人物。

 久実を泣かせた・・・ということも許せないが、それ以上に、久実と付き合っていた・・・という事実が許せない。

 自分勝手な、嫉妬心だとは思う。

 でも、俺の久実に、アイツも過去に触れたのか・・・と考えると、悔しい。

 俺は、久実と出会って1年。しかも、そのほとんどを離れて過ごしていた。でもあいつは、久実と3年も付き合っていたんだ。

 その差が埋まるのには、まだまだ時間がかかる。

 久実は驚いたような顔をして、ちょっとうつむいて、

“・・・うん。おめでとうって言われた。幸せそうでよかったって。”

そう言う。そして、

“でもね。それはあなたのおかげよ、リカルド。”

俺の目を、真っ直ぐに見て、言った。

 そう言い切る久実の言葉に、俺を見る真っ直ぐな瞳に、嘘はない。

 久実の中では・・・いや、きっとアイツの中でも、2人のことは過去のことで。大人な2人は、もう終わったこととして、話をしていただけであって。

 そんなことで嫉妬して、イライラして、練習でミスする俺が子供なんだ。

“ごめんね。大事な時なのに、邪魔するようなことしちゃったね。”

 こんな俺に、何も悪くない久実が謝る。

 そのことが、俺の子供じみた性格を、より際立たせる。

 久実は優しく微笑んで、

“そんなリカルドも大好きよ。もちろん、サッカーに集中しているリカルドもね。”

そう、俺に言った。

 久実には、かなわないと思う。

 俺のつまらない嫉妬心も許してくれて、なおかつ、俺が立ち直るように、誘導する。

 こういうところがあるからこそ、俺は久実じゃないとダメだと思うんだ。

 俺は久実を抱き上げ、ベッドの上に降ろす。

“久実は、俺だけのものだよね。”

 そう言って、寝かせた久実の頬にキスをする。

 久実は俺の首の後ろに手を回し、

“うん。私が愛しているのは、リカルド、あなただけよ。”

そう言って微笑んだ。



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