■夕日の向こうに SIDEリカルド
11
きっと、今までの人生で一番葛藤したかもしれない。
でも、そんな思いも、久実と会えるという事実の前に姿を消す。
今日、久実が日本からやってくる。
ホームゲームは快勝。チームメイトからは『久実パワー』なんてからかわれたけど・・・あながち間違いでないかも。
〈リカルドは、今の彼女と出会ってから、とても変わったよ。〉
チームメイトやコーチまでもが、そう言う。そして、
〈出来ることなら、今のまま今回は続いてほしいなぁ。〉
とも。
出来ることなら・・・って、ひどい言われようだけど、今までが今までだったから仕方ない。
でも、今回は・・・このまま永遠に続けるつもりだ。
そんなチームメイトの思いもあり、今回の久実バースディは、強力なバックアップ有となった。
試合が終わり、すぐ側のホテルへ向かう。
ホテルのロビーへ入ると、ソファーに座る久実の姿。
“久実!”
俺はそう言って側に駆け寄る。一方の久実は、
“リカ・・・。”
俺の名前を予防として、途中でやめた。
俺はかまわず、久実を抱きしめる。
“ねえ、みんな見てるよ。”
久実は周りを気にして、小さい声で言う。
“言っただろ?俺は世界中に久実のこと、自慢したいって。”
俺が言うと、久実は嬉しそうな顔をして、俺に抱きついてくる。
そんな久実を連れ、いったん押さえてある最上階のスイートへ向かう。
その間に、チームメイト達が、ホテルのレストランに来ているはず。
頃合を見計らって、レストランを訪れる。この席の周りはほぼ、チームメイト。
料理とワインを注文して、じきにワインが運ばれてくる。ワインの注がれたグラスを持って、久実と乾杯を交わすそのとき、
〈誕生日おめでとう。〉
俺の言葉と共に、まわりから一斉のクラッカー音。
久実は驚いて、グラスを持ったまま固まっている。
店のスタッフに頼んでおいた花束を持ってきてもらい、久実へ差し出すと、ようやく事態が呑み込めたようで、
〈ありがとう。すっかり忘れていたわ。こんな素敵な誕生日、初めて。〉
そう笑顔を見せた。
レストランでの誕生日パーティーは、素直に喜んでくれた。
さて、これからが・・・本番。
部屋に戻って、久実は大きな窓から外を眺めている。そんな組の隣へ向かい、久実に小さな箱を渡す。
“わ、プレゼント?嬉しい、ありがとう。ね、早速開けていい?”
久実はそう言って包みを解いていく。
“ピンク・・・ダイヤ?”
ちょっと驚いたように久実は言う。俺はその指輪をケースから出し、久実の左手を取る。
指輪を久実の薬指にはめて、
「結婚、してください。」
そう、日本語で言う。
久実はそのまま固まってしまった。
アツシから教えてもらった日本語が、通じなかったか?
〈俺には久実が必要だよ。ずっと一緒にいて欲しいんだ。〉
俺の想いをちゃんと理解して欲しくて、英語で言う。すると久実はやさしく微笑んで、
〈ありがとう。今日は嬉しいことばかり。〉
そう言って、俺の腕にしがみつく。そして、
“私も、リカルドが必要だよ。だから、ずーっと側にいさせてね。”
と、俺の欲しかった返事を、くれた。
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