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■それぞれの、形
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「でも、ここだけの話、こんなにすんなり結婚するとは思ってなかったんだけどね、実は。」

 山下さんは周りを気にしてか、小さい声で言う。・・・まあ、日本語で話してるので、ここにいる9割方の人には理解できないだろうけど。

「リカルドって、昔は素行が悪いというか・・・、つまり、女関係が結構ハデで。どこまでが本当か分からないけど、正直、庄田さんのことも、単なるガールフレンドの1人かな、って思ったんだ。しかも、遠距離だから、少々遊んでたって、分からない可能性だってあるし。それが、早々に婚約して、結婚だろ?ちょっとびっくりしたよなー。・・・ちょっと、期待外れだったんだ・・・不謹慎だろうけど。」

 笑ってはいるけど、残念そうに山下さんは言う。

 久実とリカルドが別れるの、待ってたのか、この人。

『人のものに興味はない』と言ってたわりに、久実には未練あったわけだ。

「別れろって思ってたわけじゃないよ。久実ちゃんが幸せそうにリカルドの話するのとか聞いてて、俺も嬉しかったし。でも、やっぱり次、もし2人が別れたら、その時は、ってのがあったんだとは思うよ。」

「リカルドから、盗っちゃえとかは、思わなかったの?」

「―――――それは・・・ないなあ。二人の邪魔は出来ないって思ってたし。しかも、相手が相手だし。真っ向勝負して、勝てる相手じゃないもん。」

 山下さんて、普段、キッパリスッキリで、誰に対しても、何に関しても、ズバスバやるほうなんだけど、恋愛関係にはとても、消極的みたい。会社の人とか、みんながこの本音を聞いたら、びっくりするだろう、ってくらいのギャップがある。

「まあ、庄田さんのウエディング姿も見れたし、これでスッキリするよ。俺も、そろそろ彼女欲しいし。庄田さんレベルの子が居たら、よろしくな。」

 山下さんは言うけど・・・その理想が高いのよ。・・・まあ、山下さんの好みのタイプが、久実そのものなんだろうけどね。

 私は・・・どうなんだろう?

 とりあえず、自立してて、私の仕事に文句を言わない人。頼りない人よりかは、頼りがいのある人・・・といっても、頼ることってないけど。

 そんなに贅沢言ってないと思うんだけど。

「んー・・・永井さんは、『私は恋愛なんて、興味ありません』っていうオーラが出てるんだよねー、なんとなく。恋愛対象というより、同士って感じかな?ま、これは俺の主観だけど。」

 ・・・そんなもんだろうなあ。まだ、同士って見てもらえるだけ、マシかもしれない。

「ま、ある意味、庄田さんよりレベルが更に高いんだよ。高すぎて、最初から『ムリだ』って思われちゃってるところがあるんじゃないかな。永井さん、スキ、見せないし。だから、超ハイレベルな連絡できる人とかなら、可能性あるかも。」

 1人で納得しながら山下さんは言うけど、超ハイレベルな恋愛って・・・なんですか?それ。

「でもそれって、結局は『当分一人身』ということと、同じですよね?」

 私の問いかけに、山下さんは答えず、ハハハと笑うだけ。

 まあ、私自身、今の生活が気に入ってるし、1人でもいいかって思ってるわけだし。・・・10年後も今のままだったら、ちょっと寂しいけど。


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