■それぞれの、形
2
誰もがあこがれるような式の後、島で一番大きなホテルに場所を移し、お祝いのパーティが開かれる。
日本の、披露宴といったようなものではなく、気さくな、立食パーティのようなもの。ただし、出席者の顔ぶれは豪華だし、人数も半端ではない。しかも、飛び交う会話の言語も様々。
「永井さんはいいよなー。英語ぺらぺらだし。俺、いまだに片言の英語しか出来ないから、どの輪にも入りづらいや。」
山下さんは、そう言って、出席者を見渡す。
いや、いくら会話が出来たとしても、あの輪には入りづらい。一般人なんて、ほとんどいないし。
それでも、向こうから声をかけてきてくれる人がいる。簡単に自己紹介をするくらいだけど、さすが、外国人の集まりだ。
私が名前を知るような選手になると、なかなか話すチャンスもないが、そこまでではないような選手、しかも若手となると、結構気さくに声をかけてくる。
「警戒する相手、わからないんだよ。外国人だから。」
山下さんは笑いながら言う。この人、こんなことバッカリ。
「私と、久実との扱いに差があるよね、山下さんって。」
「だって、庄田さんかわいそうじゃん、いじめたら。」
じゃあ、私はいじめていいのか?!って怒鳴りたい所だけど、この人の憎まれ口って、嫌味に聞こえないのよね。まあ、私に向かってこんなこと言うのは、この人ただ1人出し。
そんなどうでもいい話をしているところに、久実がやってきた。
「あのね、ジョアンが、久実の友達は綺麗な人だなって、わざわざ言いにきてたよ。」
・・・ジョアン・・・、あ、さっき来てたポルトガル人。英語が出来るからって、しばらく話してたっけ。
「外国人は素直だし、物怖じしないねー。」
山下さんは笑いながら言う。
「永井さん、会社では恐れられつつ、慕われるってかんじだもんな。」
その山下さんの言葉に続いて、久実までもが、
「あ、それわかります。みんなに一目置かれてるって感じしてましたよね。雅恵と話す時って、みんな敬語で背筋ピンとしてて。」
そう言って笑う。
確かに、・・・そうなんだけどね。
基本、会社での呼ばれ方は「永井さん」。同じ海外事業部で仕事していた久実が時々、「久実ちゃん」って呼ばれていたことに比べると、硬い感じはする。
がむしゃらに仕事をしてきたわけではないが、今年で社会人4年目。その間、恋人も作らず(?)仕事ばっかりしてきたっけ。
・・・いや、一人だけいたような・・・。
「雅恵、彼氏いたの?そんな雰囲気全く見せなかったのに。」
久実がおどろく。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!