[通常モード] [URL送信]

■それぞれの、形
11

 めんどくさい・・・と思いつつも参加した食事会だけど、上司は高級レストランを予約してくれていて、普段、そんなところへ行くことないので、正直うれしかった。

〈永井さん、君はすばらしいよ。才能はあるし、人望もあるし、ないよりこんなに美しいし。〉

 上司はそれはオーバーだろう・・・っていうくらいに褒めてくれる。褒められることは悪い気はしないんだけど、くすぐったい。しかも、一緒にいるマイクは私だけが褒められることに、いい気はしてないようだし。

 レストランを出て、タクシーにのる上司と別れて、さぁ私も帰ろう!と思ったが、

〈まだ早いじゃん、もうちょっと付き合ってよ、〉

と、マイク。

〈明日、最終プレゼンでしょ?失敗したくないもの。〉

私がそう言っても、

〈失敗するわけないよ。僕と雅恵がプレゼンするんだから。この仕事が終わると、日本に帰っちゃうんだろ?あとちょっとしか一緒に居られないのが残念だから、少しでも一緒にいたいんだ。〉

・・・絶対、嘘。でもまあ、上手く言うねえ。

 マイクはしつこかったけど、『明日のプレゼンが成功したら。』ということで、しぶしぶ納得していただいた。

 ホテルに戻ってから、久実に『金曜中に仕事のかたをつけるから』と連絡を入れ、その後ジョアンにも連絡をする。

《久実もロンドンに来るって。だから、ジョアンの試合が終わったら合流しようか。》

 ジョアンの土曜のゲームは15時キックオフ。夜には合流できそうって話だ。

 先に用件を話して、その後はジョアンの日常の話とか、私の仕事の話とかで盛りあがる。今日のご褒美の高級レストランの話とか。

〈この前一緒に居た、マイク、覚えてる?ちょっと面倒な人なのよね。仕事は出来るんだけど、人の意見聞かないし、女癖悪そうだし。しつこく誘ってくるのよ、行かないって言ってるのに。〉

 ちょっとマイクの愚痴をこぼす。

 女癖が悪い・・・っていうのは、嘘ではない。結構確かな情報。

 ロンドン支社の女の子から、社内の女の子の大半と付き合ってた、という話を聞いている。付き合ってた・・・というか、ほぼ、遊び。

 男前だし、頭もいいので、黙っててもモテるタイプ。そんなマイクから声をかけられ誘われたら、ころっといっちゃう気も分かる。

 今まで泣きをみた女の子も結構いるらしいんだけど、それを賢いマイクが、文句つけられないように丸め込んでいるらしい。・・・ある意味、さすが。

〈会社の子に、ターゲットにされますよーって脅されたもん。〉

 私が笑いながら言うと、

〈大丈夫なの?危なくない?〉

ジョアンは本気で心配してくれる。

 ・・・この人が、もっと身近な人だったら、言うことないのになあ。

〈ありがとう。でも、平気よ。相手にしないから。〉

〈さすが、かっこいいなあ。〉

 ジョアンはそう言って笑う。

 かっこいい、は嬉しいかも。ほら、『出来る人』み
たいで。

 出来る女は、マイクみたいな男は、相手にしないのだ。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!