■それぞれの、形 1 親友の久実が、結婚式を挙げたのはポルトガルだった。 同じ会社に同期で入社して、同じ海外事業部で仕事。まあ、久実は秘書課と掛け持ちだったから、全く同じ仕事をしていたわけではないが。 「ほんとは、こっちで欲しかった人材なのに、秘書課がどうしても譲らなくて。ほら、向こうはお偉いさん方直轄だから。」 海外事業部の部長は、よくそうぼやいていたが、私達が入社して3年目。 「社長のわがままで、大事な人材を失った。」 ウチの部長だけでなく、秘書課の課長までが、そうぼやく。 優秀な人材・・・と言われていた久実が、退社した。 本人は、一身上の都合・・・とかいって、理由をはっきりさせなかったけど、実際は、婚約者だった企画部1課の課長を、社長の娘にとられたから・・・という噂が広まっていた。 久実自体、仕事が出来るキャリアウーマン・・・っていう感じではなく、ほんわかしたお嬢様という様な印象なんだけど、真面目で、人あたりがよくて、何より物覚えがよかった。 海外事業部は、基本、仕事ができる人の集まり・・・と言われているけど、今まで『顔がとりえの秘書課』と言われていた向こうは、せっかくの人材、無駄にしたよなーっと、つくづく思う。 それから1年で、久実は結婚した。 実際、前の婚約者と別れて、一ヶ月くらいで今の人の付き合いだしたって言うから、やっぱり、男の人がほっとかない存在なんだと思う。前も入社してそんなに経たないうちに、付き合い始めてたし。 「久実がうらやましいなあ。」 教会の中で、今から始まる式を待ってる間に、私はぼそっとつぶやいた。 「なんで?」 私のつぶやきに気づいた、隣に座っている山下さんが聞いてくる。 山下さんは、同じ会社で、久実の婚約者だった斉藤課長の部下。久実の後を引き継いで、1課と仕事をするようになり、その仕事相手が、たいていこの人。 しかも、山下さん自身、久実の連絡先を知る、数少ない、ウチの男性社員。 「誰だって、うらやましいでしょ。斉藤さんと別れたと思ったら、相手レベルアップしてるし。海外で、こんなたくさんの人が集まるような式挙げれるし。」 そうなんだ。斉藤さんも、会社では超人気のある男性社員で、その人と付き合ってるというだけでも、久実は注目されていた。 それが、これから式をを挙げる相手というのが、世界的なサッカー選手で、私も久実を通して何度か話したことがあるが、男前で、優しくて、久実にべたぼれなんだもん。 まあ、海外で挙式というのは、相手の故郷だからだし、たくさんの人っていうのも、その人の関係者なんだけどね。 実際、日本からポルトガルは遠すぎて、久実の身内だって、両親と弟と、その彼女だけだし。友人にいたっては、私と山下さんだけだしね。 「まあなあ。なかなかこれだけの人を手に入れるってのは、ないだろうね。でも、俺は、リカルドがうらやましいと思うよ。だって、庄田さんだろ?なかなかあんな娘いないって。」 山下さんは笑っていうが・・・この人、あきらめてなかったのか? 山下さんから直接聞いたわけではなが、この人は久実のことを気に入ってて、何かと「庄田さん、庄田さん」とかまおうとする。 まあ、本人に、リカルドから久実を奪うって気は全くなさそうだから、問題もないのだけれど。 まあ、一旦、久実を理想にしたら、次は難しいだろうねぇ。 だって、式が始まり、バージンロードを歩く久実の姿を見て、誰もがその姿に見とれてりる、それくらい、今日の久実は綺麗だもん(もともと、可愛いんだけど。) [次へ#] [戻る] |