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■夕日の向こうに
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 一度自分の部屋へ戻った私は、シャワーを浴び、着替えを済ませてから、荷物を少し整理した。

 といっても、そんなに持ってきてないし、お土産買ったわけでもないんだけど。

 このホテルで2泊して、その後の予定は決めていない。このまま連泊して、リスボンを見てまわるのもいいし、チェックアウトして、他の場所に行くのもいい。

 リカルドは・・・マデイラに今日、帰るんだっけ?まだ出会って1日たってないけど、彼と離れることを考えると、とても寂しく思う。さよならすると、たぶん・・・いや、きっと二度と会うことはないだろう。旅行中に出会う人なんて、そんなものなんだろうけど・・・。

 私が、ふぅ、とため息をついた時、

−キンコーン−

部屋のチャイムが鳴った。

〔クミ。僕、リカルド。〕

 部屋の外からリカルドの声がする。

 私は慌ててドアを開けた。

 そこにはスポーツバッグを手に、リカルドが立っていた。私は彼を部屋へ招き入れる。

〔クミ、これからどうする?〕

 リカルドは部屋へ入るなり、そう言った。

〔僕と一緒にマデイラへ行こうよ。〕

 マデイラか。昨日、リカルドが『のんびりしてて、いいとこ。』って言ってたっけ。

『のんびりしてて、いいとこ』っていう所に行ってみたい、という気持ちももちろんある。リカルドの故郷を見てみたい、という気持ちもあった。

 でも、一番は、リカルドとまださよならしたくない、という理由だった。



私は荷物をまとめ、リカルドと一緒にホテルをチェックアウトした。そしてタクシーで空港に向かう。

 リスボン国際空港から、マデイラ空港まで飛行機に乗るそうだ。

 リカルドが、私の分も一緒にチケットをとってくれた。しかも、お金まで払ってもらって・・・。私は自分の分は払うと言ったんだけど、

〔僕が誘ったから、僕が払う。〕

そう言ってさっさと払ってしまった。

 ・・・リカルドって何者?

 21歳ってことは、大学生でもおかしくない。イギリスの大学に進学してて、里帰りとか。あ、ありうる。

 社会人・・・この時期に休暇ってあるのかな?しかも、実家離れて、外国で仕事・・・。出張とかなら、ありえるだろうけど。

・・・まあ、いいや。リカルドが何であれ、リカルドに変わりないんだから。


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あきゅろす。
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