[携帯モード] [URL送信]

■夕日の向こうに
56

 空港まで、私の家族を迎えに行ってくれたのは、雅恵と山下さんで、後から散々、雅恵に怒られた。

 香織ちゃんは心配してくれて、久志には大笑いされた。山下さんは、

「永井さんにはない、繊細さだよな。」

そう言って、雅恵に怒られてたけど。

 そんな優しい家族と、友人と、そしてとても私を大切に想ってくれるリカルドに囲まれた私は、とても幸せ者なんだ、と実感する。




 次の日、朝一番の飛行機で、マデイラに向かう。

 もう、今日の夕方には結婚式だと言うのに、私は自分が式を挙げる教会の位置さえ、ちゃんと把握してない。去年、マデイラにいた時、リカルドと一緒に行ったことはあるんだけど。

 空港まで、リカルドの両親が迎えに来てくれてて、私の両親とは初対面。結婚式までに一度・・・という話は出ていたんだけど、なかなか簡単に会える距離ではないし。

“お父さん、お母さん、紹介します。私の父、庄田武志と母の康子。こっちが弟の久志で、そのガールフレンドの高橋香織さん。”

 一通りの紹介は自分でしたけど、その後は通訳さんに任せてある。さすがに通訳なしでは会話が成り立たないし、私が通訳してる場合ではないし。家族だけでも、日本人とポルトガル人。それに友人とかを含めると、今日、ここに集まってくる人は多国籍状態だ。

 車で先にホテルに寄って、それから準備の為に教会へ向かう。

 準備っていったって、時間がかかるのは私ばっかりで、リカルドはみんなに挨拶まわりをするらしいけど。久志と香織ちゃんは『観光してくるー!』って出かけて行ったし。

 私の控え室には、着付けやメイクをしてくれるスタッフさんと、通訳さん。雅恵とリカルドのお母さんとうちの母。

「お父さんは?」

 そういや、姿を見ていない。部屋にも来ないし。

「じっとしていられないみたいで、そこら中、うろうろしてるわよ。落ち着かないんでしょうけど。あんなお父さん、滅多に見られないわよ。」

 お母さんは笑いながら言う。

 違う意味でうろうろしてるのは、リカルドのお姉さん達。状況報告とか、準備とかで、駆け回ってくれている。

 リカルドの2人の姉は、私の1つ上と、1つ下。2人ともリスボンに住んでいて、上のお姉さんが、ドレスを作ってくれたらしい。

“写真見て、これなら似合う!と思う物をデザインしたの。勝手に作っちゃったけど、どう?”

 彼女はそう言って、ドレスを着た私をまじまじと見つめ、

“想像通り!すごくいいわ!”

そう言って喜ぶ。

 自信たっぷりの彼女の言葉通り、彼女の作ったドレスは私にぴったりで、まわりのみんなも、とても褒めてくれている。

 そんな時に、

“久実―、どう?準備できた?”

そう言いながら、リカルドが入ってこようとしたけど、

“まーだ。あんたには見せてあげない。もうちょっと楽しみにまってなさいよ。”

そう言って、お姉さんは追い返す。

“後で写真撮らせてね。それで、リスボンの私のお店に、飾らせて欲しいの。”

 お姉さんはそう言うが・・・私の写真でいいんですか?って感じだ。モデルさんとかの方がいいのでは?

“そこらのモデルなんかより、久実のほうが、断然かわいいわよ。リカルドも面食いなんだから・・・。あんな弟だけど、よろしくね。・・・一番子供の癖に、1人だけ、さっさと結婚決めちゃってさ。”

 そのお姉さんの言葉を、通訳さんが訳したのを聞いて、雅恵は大笑い。

「ほらね、リカルドの傍に久実がいても、文句を言う人なんでいないでしょ?。」

 そう言ってニヤリを笑う。

 その後に来た、春奈さんと香織ちゃんも、とても褒めてくれた。

 みんなが祝福してくれている。

「びっくりですよー。ここ、結構大きな教会じゃないですか。なのにもう人でいっぱいですから。見たことある人がいっぱいいたし。」

 香織ちゃんは、興奮したように言う。彼女の話によると、外にはさらに興奮している久志がいるらしい。高木さんにくっついて、いろんな人と話をするのに必死だとか。・・・あいつらしいなあ。

 でも、日本からはるか遠い、ポルトガルでもリスボンから1600kmも離れた島。リカルドの故郷とはいえど、みんなが住んでいる所からは遠いこの場所に、わざわざやってきてくれたことに、感謝する。


[*前へ][次へ#]

5/6ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!