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■夕日の向こうに
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 リスボンの中心部にあるオフィス街。その中にある、そこそこ大きい会社が、今日の相手先らしい。

 用件も、内容も全く知らないまま、とりあえず通訳してたけど・・・。とりあえず業務提携して、ゆくゆくはポルトガル支社をだすって・・・。どんどん手広くなっていくなあ、この会社。海外部、世界中に出張しなくちゃならなくなるよ、きっと。

 まあ、山下さん雅恵も実際、今出張でポルトガルに来てるんだけど。




 商談も一応成立して(まだいろいろ話を詰める必要はあるが、それはまた後日)、仕事の話も終わり、最後に挨拶をしてる時に、

“どこかで見かけたことがあると思っていましたが、リカルド・フェルナンデスの、婚約者の方ですよね。”

いきなり、そう切り出された。

 おもいっきり、顔ばれてるし!

 取引先のその40代くらいのポルトガル人の男性も、サッカーが好きで、リカルドがポルトガルのチームに所属していた頃から応援しているらしい。もちろん、W杯も見てたし、プレミアリーグも観てると言ってた。

“なんか、ちょっと得した気分になりましたよ。”

 最後にその人は笑いながら言ってたけど、・・・私リカルド本人じゃないですよ、もちろん。

 喜ばした分、悪い気がする。

 最後の雑談は全てポルトガル語のみだったので、内容がわからなかった雅恵と山下さんに、帰り道話の内容をつたえると、

「得した気分って・・・あ、でもわかるような気がする。」

そう言って二人は大笑い。

「でも、ほんと助かったよ、ありがとう。これでしばらく夏休みだ。」

 山下さんは楽しそうに言う。

 日が暮れるまで、まだ少し時間もあるので、どうせなら近場の観光スポットを巡ろうということに。

「なかなか、ここまで来ることはないもんね。」

 雅恵が言う。

 日本からは直行便もないし、ツアーもない。日本人を見かけることだって、ほとんどない。

 東洋人が珍しいんだもん、日本語なんでほぼ、通じないし。

 まあ、だから前回、迷子になったんだけどね。

 なので、私はリスボン二回目だとはいっても、ほぼ、知らないといって等しい。強みといえば、ポルトガル語が話せるだけで、雅恵や山下さんの天性の方向感覚には叶わない。

 ・・・そういえば、地図見るのも苦手だわ、私。


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