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■夕日の向こうに
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 2度目のリスボン2日目。思いがけない人から、思いがけない内容の電話。

『久実、明後日あいてる?たしか、いまリスボンだよね?』

慌てたような声の雅恵。

『2時間くらい、同行して欲しいの。申し訳ないんだけど。また、そっちに行ってから連絡するから。』

 内容もわからないまま、電話は切れる。

 雅恵がポルトガルへ来るのは、最初から知ってる。仕事も忙しいし、あまりにも遠いので、結婚式に来てねーとは言えなかったんだけど、雅恵は『無理やりにでも、有給使って行くよ。』と言っていたから。
でも、直前に来ると思ってた。明後日って・・・ちょっと早目じゃん。しかも同行って・・・、何だろ?

 まあ、私は暇なんで、時間は取れるんだけどね。リカルドは相変わらず忙しそうにしてるけど。

 今回の大会で、リカルドはよりいっそう、有名になった。雑誌にもたくさん取り上げられているし、しかも、母国ポルトガル。知名度は他国より圧倒的に高い。ホテルに帰ってくるのも夜遅くになってからだし。まあ、国民性か、朝は比較的ゆっくりしてるけど。




 雅恵と約束の日。朝食前に雅恵から連絡が入った。

『久実、ごめんね、朝から。何してた?』

「まだホテルにいるよ。今から朝ごはん食べに行こうと思って。雅恵は?」

『私も朝食まだ。思ったより寝過ごしちゃったよ。今ね、リスボン市内のホテル。』

やっぱり。こっちに来てたんだ、昨日のうちに。

『どこ泊まってるの?そっち行くからさ。今日のことも話しとかないといけないし。』

 雅恵が言うので、ホテルの名前と場所を告げる。雅恵は電話口で地図を見ているようで、

『すぐ近くだよ、ここから。いつ頃行こうか?午前中には会っておきたいんだけど。』

雅恵が言うので、どうせならホテルのレストランで、朝食をみんなで・・・、ということに。リカルドも朝はゆっくりしてられるし。



30分ほどして、雅恵と山下さんがやってきた。

「ごめんねー。私はおきてたんだけど、1人寝てた人がいてさー。」

そういう雅恵の横で、まだちょっと眠そうな顔で、バツが悪そうに笑う山下さん。

「思ったより時差ぼけが・・・。しばらく日本で生活してたからなぁ。」

 たしかに、日本からはめっちゃ離れてるし、飛行機での移動時間も半端じゃない。

“それで、同行ってなに?”

 席について注文を終え、本題に入る。

“実は、通訳を頼まれて欲しいの。実はこっちに来たのは仕事がらみなんだけど、当初、先方の人は英語の出来る人って話だったのに、急に昨日になって、ポルトガル語しか話せない人が商談に来ることがわかって。通訳手配する時間もなくてねー。久実だったら、話せるし、会社のこともよく知ってるし、と思って。ごめんね、辞めた会社の手伝いさせて。”

 そんな大事なとこで、通訳するんですか?私。

 大丈夫かなあ。通用するのか?私のポルトガル語。

“大丈夫だって、久実の語学力は、僕が保障するよ。”

 リカルドもそう言ってくれたので、とりあえず、引き受けることに。

“ありがとう。このお礼は海外部の部長にたっぷりさせるから。”

 雅恵はほっとした表情で、笑い名から言う。そして、

“まあ、おかげで、会社の経費で堂々とこっちに着たんだけどね。”

そう付け加えた。

 しばらく4人で話していて、そしてリカルドは用があるので一足先に出かけていく。

「見たよ、W杯。夜更かしして。おしかったねー、後一歩だったのに。」

 リカルドがいなくなってから、山下さんはW杯の話をする。気を使ってたのかな?

「うん、みんなすごく頑張っていたのにね。」

「私も見てたよ。・・・ていうか、久実が目立ってた。」

雅恵はニヤリと笑って言う。・・・なんですと?!

「あ、それ俺も見た。ポルトガルサポーターのなかに、1人日本人がいて。わざわざ解説が説明してたもん。リカルドの婚約者で、浦和の庄田選手のお姉さんですって。」

 山下さんも笑いながら言う。

 日本人なんて、他にもいたのに。・・・一般の観客席に。

 しばらくW杯の話や、日本の話で盛り上がってたけど、そろそろ時間だということで、2人と一緒にホテルを出る。

 2人はちゃんとスーツを着てるんだけど、私1人私服ですが、大丈夫なんだろうか?着替えるっていっても、スーツなんか持ってきてないけど。

「ジーンズにアロハシャツだったら、着替えてもらうけど、久実の私服ならそのままでいいよ。基本おとなし目だし、きっちりしてるからさ。」

 雅恵がそう言ってくれたので、とりあえず一安心。

さすがにアロハシャツは持ってないけど、ジーンズくらいは持ってるよ。今日は避けたけど。

 今日は薄いピンクのワンピースに白いショート丈ジャケット。一応、持ってきてる服で、それなりの選んでよかった。あまり数も持ってきてなかったし。買うといっても、サイズが合わないしね。


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あきゅろす。
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