■夕日の向こうに
3
信吾と別れて2日。いつものように会社に行くと、秘書課にいたのは海外事業部の友人、永井雅恵だった。
「久実、ちょっと。とんでもない話聞いちゃったんだけど。」
と、朝から怖い顔して言う。
「え?」
「いいから、ちょっとこっちきて。」
私は雅恵に連れて行かれるまま、第三会議室に入る。
「宮原のお嬢さんが、斎藤さんと付き合ってるって、言いふらしてるわよ。」
雅恵の話を聞いて、私は納得した。
信吾は、宮原園華と付き合うことになったから、私と別れたんだ。
会社にいる・・・ってことでだろうか、妙に私は冷静だった。
「ああ、そうなんだ。いいのよ、私たち、別れたし。」
私がさらっと言うと、雅恵は、
「なんで?!来月結婚って・・・。もう、すべて段取りもできてたのに!」
自分のことのように怒ってる。
「いいの。もうすんだことなんだし。ごめんね、雅恵。気、使わせちゃって。じゃ、私今日社長同行だから、もう行くわね。」
私はそう言って、雅恵のいる第三会議室を後にした。
・・・ふ〜ん、宮原園華とねえ。
「庄田くん、なにが食べたいかい?」
社長同行・・・って、私はほんとについていくだけなんだけど、今日の社長はものすごく私に気を使う。
・・・きっとこの人が一枚噛んでるな?
私の予想は当たってた。
「庄田くん・・・うちの園華が・・・なんというか・・・すまんのう。」
歯切れの悪い、社長の言葉。
「社長、知ってることがあったら、全部話してください。斎藤は婚約者だった私にも何も話さないんです。納得がいかないのに、すんなり別れられません。」
社長が、信吾と宮原園華を引き合わせたらしい。
社長が、信吾に宮原園華との付き合いを進めたらしい。
社長が・・・。ふ〜ん。
そして。
私はすぐに会社を辞めた。
辞表提出して、一ヶ月、有給消化も終わり、正式な退社。
会社からは、慰謝料も込みなんだろうなあと思われる、膨大な金額の退職金が支払われた。
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