■夕日の向こうに
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「庄田先輩の彼氏って、かっこいいですよね〜〜。」
ある日、宮原園華が秘書課で仕事中に、私のそばにやってきて言った。
「園華も、あんな人が彼氏に欲しいなあ。」
能天気に宮原園華は言う。
・・・社長の娘・・・。だから、私も我慢してるんだ。
仕事はしない、できない、やる気ない。の宮原園華。何のために会社に来てるんだ?
いくら教えても、仕事は覚えないし、しかも、他の人の邪魔になるようなことまで。
私は秘書課と、海外事業部との掛け持ちなんだから、あんたの相手をしてる暇はないのよ!
私がこの会社に入れたのは、英語力のおかげだと思っている。
学生時代に培った能力。日常会話くらいは普通にできる。なので、海外事業部で仕事をすることがよくある。・・・まあ、それで信吾と知り合ったんだけどね。
そう、それでだ。
その宮原園華は、よりによって信吾を気に入り、愛娘を溺愛してる社長にまで、信吾のことを言ったらしい。私はなにも知らなくて・・・。
ある日突然。
「ごめん、久実。婚約・・・解消して欲しいんだ。」
と、信吾からの言葉。
・・・・・・今、なんて?
「勝手なこと言ってるとは思ってるけど、別れてほしい。」
「ちょっとまって。なんでそうなるの?結婚するって、来月結婚するって話だったよね??」
「だから、ごめん。結婚できない。」
私は、必死に冷静になろうとする。でも、何が何だかわからない。
いつの間に、こんなことになったんだ?だって、この間も、仕事が終わった後食事したし、もうずいぶん喧嘩した覚えもない。
どうするの?会社にはもちろん、結婚するって言ってるし、社内でも有名になっちゃってる、いまさら、やっぱりやめました、なんて、平気な顔で言えるわけないじゃん。
「慰謝料とか、きちんとするとこは、きちんとする。だから、頼む。」
・・・でも、結局、私は信吾のいう事を、素直に聞いちゃったんだ。
信吾からは、破局の理由は聞かせてもらえなかった。何を言っても『ごめん』ばっかりで・・・。
私のことを嫌いになったんではない・・・とは思う。信吾自身に、何かあったのかな?と思ってた。
でも、私たちの破局の理由が、私の耳に入るまで、そう時間はかからなかった。
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