■夕日の向こうに
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リスボン空港から1時間40分。マデイラ島、フンシャル空港に到着した。
リスボンも異国情緒あふれる街だったが(異国だから、当たり前なのかもしれないが)、マデイラはさらに、独特の風情がある。
空港のあるフンシャルは、マデイラの中心地。人も多く、にぎやかだ。
〔マデイラは観光地だからね。地元の人に加え、観光客もいるから。〕
リカルドはそう説明する。
さて、マデイラに着いたのはいいけど、今からどうしよう。リカルドは家に帰るだろうから、私はとりあえず、本日の宿探しをせねば。
〔ねえ、お勧めのホテルとか、ある?〕
私がたずねると、
〔ん?〕
リカルドは不思議そうな顔をする。
〔だから、今日泊る所。リカルドは家に帰るだろうけど、私はホテル取らなきゃ。〕
そう言うと、リカルドは、
〔家においでよ。お客様の1人や2人、泊められない家ではないよ。それに、母さんの作るポルトガル料理は、どこのよりも美味しいんだから。〕
さも当然といったような顔で言うが・・・、ちょっとまって。このうえ、リカルドの実家にお世話になるのかい?
私が躊躇してると、
〔大丈夫。遠慮することないし。・・・じゃあ、ホームステイって気分でどう?ポルトガルの生活と、言葉と、肌で感じられるよ。〕
と笑顔でリカルドは言う。そして、
〔あ、そうそう。マデイラはリスボンと違って、そんなに英語通じないよ。ポルトガル語わからないと、チョット困るかも。〕
とちょっと意地悪っぽく言った。
そんなこと言われたら、1人で行動できないよ。
〔・・・よろしくお願いします。〕
私がそう言うと、リカルドは得意げに微笑んだ。
・・・私も、一人で海外来て、一人で行動できないって、何やってんだろ・・・。
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