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■夕日の向こうに
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 リスボン滞在二日目。私は途方に暮れていた。

「あーあ。私の人生、ここまでか・・・。」

 川辺で夕日を眺めながら、一人つぶやく。

『人生ここまで』っていえば、大げさなのかもしれないけど、気分的にはそんな感じ。

 庄田久実、二十五歳の夏。ポルトガルの首都、リスボンにて、短い人生を振り返る…か。




 そもそも、なんで私がこんなところに一人でいるかと言えば、それには深い訳がある。



 名前からして、もちろん私は日本人。国籍は日本だし、現住所だって、東京都。それが、日本から遠く離れた、ヨーロッパの西の果てにいるか。

 ただの、観光旅行、ではない。

 やけの、観光旅行、と言えば、間違いではない。





 ほんの一ヶ月前まで、私には婚約者がいた。

 同じ会社に勤める、五つ年上の、斎藤信吾さん。そこそこ大きい企業で、第一企画部一課の課長。三十歳という若さで異例のスピード出世をした、会社では知らない人はいないような人物。

 私が入社した3年前に知り合い、付き合うまでそんなに時間はかからなかったから・・・三年弱で結婚話。うん、どこにでもある、平凡な話。



 それがだ。

 今年の春、私の所属する秘書課に、一人の新入社員が入ってきた。

 宮原園華、二十二歳。

 若い(って言っても、三歳しか変わらないんだけど)し、顔だってかわいいし、スタイルだっていい。そりゃ、もちろん、男性社員のアイドルにはなるだろう。

 しかし。ただのアイドルとは、周りの対応が違う。

 そりゃそうだ。彼女は社長の娘なんだから。


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あきゅろす。
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