■青天の霹靂2 2 目の前の長町さんは、真剣な表情で私をじっと見ている。冗談ではないらしい。 わたしは結婚なんて、何も考えてなかった。したいとか、したくないとかではなく、それどころじゃなかったんだ。仕事だって忙しいし、私がやらなきゃ、誰がやるんだ?って感じで。 確かに嫌気がさして、寿退社でも出来ないかなー、なんて思ったこともあるけど、最近では開き直っていた。なんせ、うちのSSで一番男らしいからね、私は。頼られたりするの、好きなのかも。 長町さんのこと、好きだし、頼り甲斐もある(かもしれない。私があまり人に頼るタイプじゃないのでよくわからないが)。 それより、こんなチャンス逃したら、たぶん次はないだろう。嬉しいんだけど…手放しでは喜べない。 「私の仕事…わかってるとは思うけど…家の事、ちゃんとできないよ。」 私が恐る恐る言うと、長町さんはにっこり笑って、 「うん。それは仕方ないよ。俺も美恵子も同じ立場なんだし。忙しいだろ、だからいつも近くにいるのに、あまり会えないし。だから結婚して、同じ家に住めば、会える時間が増えるだろ?俺は美恵子と少しでも一緒にいたいんだ。」 照れもせずに、私の目を真っ直ぐ見て、言う。 すごいや…この人。 付き合い始めて五ヶ月で、結婚なんて決めちゃっていいのかなーって少し思った。でも、ずっとうまくいくなら、今結婚しても、五年後結婚しても、上手くいくんだから。 それに、もう今更どうしようもない。プロポーズされて、「うん」って言っちゃったんだから。 結婚するって決めて、その後はものすごく事が運ぶのが早い。 私が長町さんの両親に会って、長町さんが家に挨拶に来て。 二人とも歳が歳だし、スムーズに事が運ぶ。簡単な結納も済ませ、年明けには三月の式場をおさえることが出来た。 残るは会社への報告。式、挙げるんだから、会社関係も呼ばなきゃいけないなあ。 「常務、ちょっとお話が。」 いつものように常務がSSに来た時。 「私…三月に結婚する事になりました。まだ、社長には言ってないんですが。」 と話をきりだした。 「お、そうか。それはめでたい事だ、おめでとう!」 常務はお世辞ではなく、喜んでくれている。そして。 「で、相手は?どんな奴だ?わしも知ってる奴か?」 知ってる奴…といやあ、知ってる奴かも…。さて、こっから先を、口にしていいものか。 「私より一つ上の、同業者なんですけど…。」 「おうおう、スタンドマンか。そりゃお似合いだ。どこの奴だ?」 常務はまだ、にこにこしている。 「すぐそこの…大和石油の所長・・・です。」 常務の笑顔はそこで消えた。 「まあ・・一応社長にはわしから言っとくが…、また直接報告しとけ、な。」 そう言い残して帰っていった。 これからが、大変な事になるのは目に見えている。本当の戦い(戦いって何だ?)はこれからだ。 めんどくさいのは、嫌なんだけどなぁ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |