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□葛原心霊相談所
3-4
 クラスのほとんどが肝試しを終え、スタート地点まで戻ってきてる。あたしたちの順番はそろそろ。

「圭子、木嶋となんだねぇ。」

 詩織はそう言って笑う。でも、そのあと真顔でこそっと、

「佐々木とか、あんまりいいように思ってないよ。あいつ、木嶋のこと気に入ってるし、圭子のこと、気に入らないみたいだし。」

と、耳打ちしてくる。

 佐々木かあ…。同じクラスメイトだけど、確かにあまり仲良くないなあ。なにかと突っかかってくるし、あたしだって、あいつ、うざいもん。

「いいよ、あれにどう言われたって、たじろぐ圭子さんではないよ。」

 あたしがそう言うと、詩織は大爆笑してる。

「確かに、あんたは言われてびびるタイプじゃないね。あ、そろそろだよ、いってらっしゃーい!」

 詩織にそう言われて見送られ、遊歩道に向かってあたしたちは歩き出した。



 始めのうちはそこそこ明るいし、後ろにみんなのいる気配があるので、木嶋も普通に歩いていた。しかし、カーブを曲がってみんなから見えなくなり、しかも急に暗くなったもんで、あたしの腕を掴んでいる。

 これじゃ、どっちが男かわからないよ。

 木嶋に腕をつかまれたことで、あたしはさくらの姿も見えるようになって、気分的には三人で歩いているみたい。しかし、見えるようになったのは、さくらだけではなかった。

 あちこちに、浮遊している霊が見える。

「ここ…こんなにいたんだ。」

 あたしが呟くと、それに答えたのはさくら。

「昨日の怪談話で、集まってきたのもいるからねえ。でも、たいしたことない浮遊霊だよ。」

 木嶋はというと、足もとだけを見て歩いてる。周りは絶対見ない。

「あれじゃない?京香が言ってた木と言うのは。」

 あたしはずっとさきにある、大きな木を見て言う。たしかに、誰かの影がある。まだ遠いので、はっきり目視できるわけではないが…。

 木嶋の腕を掴む手に力が入る。いっそう顔が青ざめてる。

「あー、たしかにやばそうなのがいるぅ。」

 さくらがのんきな声をあげる。

 木に近づくにつれ、異様な気配をあたしまでもが感じる。木嶋は震えているし、さくらの顔からも笑みが消えた。

 確かに女の人だ。髪の長い、顔の青い女の人。一見表情が悲しそうなのだが、その奥に憎しみが見える。

 これは、よくない霊だ。


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