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□葛原心霊相談所
3-2
 結局話の行き着く先は、怪談話。有名な心霊スポットの話だとか、誰かから聞いた話だとか…。

「そういや、ここからちょっと奥に入った遊歩道、出るらしいよ。」

「ええ?どんなの?」

「大きな木が一本あるんだけどね、そこで首つった人がいて、たしか、女の人。恋人に捨てられて自殺したもんだから、男の人に取り憑くって。」

 木嶋が好かれそうな、幽霊だこと。

「じゃあ、私たちは関係ないね。」

 みんなはのん気にそう言ってる。まあ、あたしも関係ないけどね、木嶋が憑かれない限り。

 でも、この手の話って、どこまで本当なのか怪しいからな、作り話ってこともあるだろうし。

 ま、この話が事実なら、たぶん、近くまで来てるだろうなぁ、その女。

 あたしが聞くだけの怪談話は、消灯時間がすぎても、盛り上がっていた。誰一人、寝る奴はいない。

 一つの話が終わって、また新しい話が始まるその時、

「おい、お前たち、まだ起きてるのか?」

 いきなり部屋の戸をあけて、木嶋が顔を出した。

「消灯時間すぎてるから、騒ぐなら静かに騒げ…。」

 木嶋は部屋を見渡しながらそこまで言って、固まった。そしてゆっくりを目線をそらし、だまって外に出る。

 何か、いるな、ここ。

「あたし、ちょっとトイレ行ってくるね。」

 あたしはそう言って、部屋を出た。そして、木嶋の後を追う。

「ねえ、何か見た?」

「…女がいた…。」

 木嶋はボソッと言う。そのまま廊下を抜けて、建物の裏手に出た。

「さくら、あの部屋にいた女って、もしかして、その前に京香が言ってたこの近くに出るって言う、女の霊?」

 あたしは木嶋の手を握って言う。

「そうみたいだよ。圭子たちが怪談話してたから、寄ってきたみたい。」

「やっぱり…。じゃ、あの話本当だったんだ。」

 木嶋の手を握ったことで、姿を見ることが出来るようになったさくらが言う。

 京香の話によると、男に取り憑くって…。ただでさえ幽霊に好かれやすい木嶋のことだ、また憑かれるかも…。

「さくら、木嶋が憑かれないように見ててね。本当なら、今すぐにでもなんとかしたいけど、部屋、みんながいるからなあ…。ちょっと無理だ。」

. あたしはさくらに言う。

「わかった。じゃ、私は木嶋に付いとくね。でも、これ以上部屋の中の霊、増やさないでよ。対処のしようがなくなるから。」

 さくらは念を押す。

「そんなこといってもねえ…みんなにどうにかしてもらわないと…。」

 あたしは呟きながら部屋へと戻る。

 あいかわらず、部屋の中では怪談話が繰り広げられてる。

 この人たちをあたしに止めろと?ノリノリで話してて、この楽しそうな雰囲気を壊すと、何を言われるか…。

 もういいや、先に寝てしまえ!


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