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小説
幸せの定義 兵部過去? 葵がらみか?完結
私は幸せだったのかしら?
 そう思うときがある。
 幸せだったのかしら?
 ずっとずっとずっと胸に秘めてきたこの問い。
 これに答えてくれる人はいるのでしょうか?
 それは私にもわかりません。
 からんころん、と鳴らした下駄の音。
 そしてずっとずっと通ったあの道。
 思い出すのは、思い出すのは、思い出すのは……。


 からんころんと下駄がなる。
 手習いの先生の家までは、この道が一番早い。
 からんころんと下駄の音がなる。
『ほらほら見て見て、相変わらずかっこいいわね』
 ひらひらひらと風に舞うリボン。
 真っ赤な真っ赤なリボン、それはあの人に見られたいがためにつけたものだった。
 黒髪につけた真っ赤なリボン。
 とんとん、と横にいる友が肘で私の肘をつく。
 私の髪の上で舞う、ひらひらひらと舞う、それはまるで紅き蝶のように。

『……ほんとね』
 胸が高鳴る。あの人をみられるだけで私は幸せだったのです。
 あの人が通る。私たちの横を。
 すれ違うすれ違う、すれ違う。
 いつもこの瞬間、この道で。
 手習いの先生の家まではもう少し、いつもあの方とすれ違う。
 横顔がとても凛々しい、そう凛々しいのだ。
 学生服のあの人が、私の横をすり抜けて、そしてあの人の姿が……私たちの視界から消える。
 振り向く勇気さえなく。
 ただ刹那すれ違う瞬間が、とても幸せ。
 このときが一番幸せだった。
 私の幸せってなんだったのでしょうか?
 今私にあるのはただぽっかりとあいた胸の虚空。
 ひらひらひらと舞うのは紅の蝶。
 あの人とすれ違うだけで、私は幸せで、幸せで、幸せで。
 それだけで幸せだったのです。
 ただそれだけだったのです。
 あの人の白き凛々しい横顔をみることができるだけで。
 ただそれだけで、私はあの時幸せだったのです。



「おばあちゃん?」
 ただ聞こえるのは私を呼ぶ声。
 私は私は私は?
 からんころんと下駄の音がなる音が聞こえる。 どうしたんや? と尋ねる孫の声が聞こえる。
あなたは幸せにね。葵と声をかける。涙ながらに私を孫がみた。ああこの子は私ににてると思う。あの人に恋してた時の私に 幸せになってと言葉をかける。人と違う運命をもってしまったこの子に幸せをと思う。



兵部にだってこんなに思ってくれる人いるかなと(>_<)葵をからませたかった

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あきゅろす。
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