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瞳、瞳… (ティエミレ)







「んー…!やっぱり外は気持ちいいですっ」






休憩も兼ねてトレミーを出て、今はミレイナと一緒に外を歩いている。
山々に囲まれた自然豊かな土地が広がる久々の地上はとても心地よく、昔のように嫌悪感を持つことなんて全くなくなった。
それも、きっと僕が変わったからなんだろう。




「あ、…アーデさん見てくださいですっ」



少し先を歩いていたミレイナが何かを見つけたらしく草むらにしゃがみ込んだ。
そしてそのままの状態である一点の場所をジーッと見つめ始めた。
何がいるのだろうかと僕もミレイナの隣にしゃがみ込むと、



「!」



小さな赤い瞳と目があった。





「ウサギ…か?」
「はいです!!野生のウサギなんて初めて見たですっ!!」



ミレイナはよっぽど嬉しいのかニコニコしながら触りたそうにうずうずしているが、ふわふわとしてそうな白い毛並みのウサギの方は警戒してピクリとも動こうとはしない。



そのままウサギは逃げるチャンスを伺って、ミレイナは触るチャンスを伺って、僕は何も考えずに三角関係でにらめっこを続けているとミレイナが唐突に妙なことを言い出した。



「このウサギさん、アーデさんに似てるですっ!」
「は?」



どこがどう似ているのか、
分からなくてもっとジーッとウサギを見てみた。



するとミレイナが笑いながら眼ですっ!と言った。



「眼…?」
「アーデさんの瞳もウサギさんの瞳も綺麗な紅い色です!」



言われてみれば確かに自分も紅い色の眼でウサギも紅い色の眼で。
でも、僕の瞳はきっとこのウサギのように澄んだ色はしていないと思う。
こんな風にキラキラと光ってはいないんではないだろうか…。



「あ、ウサギさんっ!!」



僕らが眼の話をしている間に、隙をうかがってウサギは素早く逃げてしまった。



「残念ですー、アーデさん逃げちゃったですー…」
「…アーデさん?」



また突拍子のないミレイナの言葉に聞き返すと、あのウサギさんの名前ですっ!!と屈託なく笑って返されて。



「…馬鹿らしいな」
「む。そんなことないですー!あのウサギはアーデさんなんですっ」
「そんなに似てたか…?僕の瞳はあのウサギの瞳に」



思わずそう聞いてみるとミレイナは自信たっぷりに「はいですっ!!」とうなずいて、



「すっごく綺麗で透き通った紅い瞳ですっ!!」










トレミーへの帰り道。
ミレイナはまだあのウサギが逃げてしまったことを残念がっていて、宥めながら歩いていた。




「でもミレイナもあんな風にキラキラとした瞳になりたいですっ」



ミレイナのそんな言葉に珍しく好奇心が沸き立ち止まって、ミレイナの眼を至近距離から覗いてみた。
いきなり顔を接近させたからだろうがミレイナは顔を赤くして「あああ、アーデさんっ!?」と驚いた声をあげた。
そして、
その眼は、
僕を写して、
綺麗な紫色に光っていた。




「ミレイナも綺麗な瞳をしているさ」
「本当ですか!?良かったですー」



じゃぁミレイナとアーデさんどっちが眼の色が綺麗かみんなにきくですー!!
そう言って僕の手をとってミレイナはトレミー向かって走り出した。
また突拍子もないことを…と少しだけ呆れつつ突っ込もうとしたが…、さっき覗きこんだ彼女の瞳を思い出して言おうとした言葉を引っ込めた。




二人で、いつまでも綺麗な瞳をして生きていけたらいい。
憎しみや絶望に染まって澱んでしまった瞳なんかじゃなくて。



希望と幸せに満ちた今の綺麗な瞳のままで…。





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テレビで紅い眼のウサギを見た弟の「あのウサギ、眼がティエリアだ!」という言葉からできたお話です(笑)


た、確かに…!!←





09.03.03

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あきゅろす。
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