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short story
雨色キャンディー


「やばい、雨だ。」

長かった補習も終わり、雨が降りそうな空を背に走って家に帰っているところにこれだ。 最初は、弱かった雨もどんどん雨足が強くなって、私を容赦なく叩きつける。
このままだと、風邪を引くと思い急いでシャッター街の一角に避難する。
仕方がない。少し雨足が弱くなるまで待つか。

……暇だなぁ。
何がやろうにも今私の鞄の中には勉強道具しか入っていない。
ここで勉強をしようと思えるほど私は真面目じゃない。例え勉強をしたとしても、なんにも分からないから、開いた瞬間にもう頭はハテナマークだ。

これだから雨は嫌いなんだ。外で遊べない。普通に帰らせてくれさえしない。家にずっといるから勉強しろ、手伝いしろって言われるし。

「…お腹すいた。」

独り言を呟く。独り言を言っても雨の音にかき消されて独り言も寂しくなくなるところは雨の良いところかも。

「飴ならあるけど、いるか?」

独り言に返事が返ってきたことに驚いて振り向けばそこには、知らない人。制服を見ると同じ学校の先輩のようだ。

「えっ、もしかして俺の顔見たことない? 毎朝同じ通学路通ってるんだけど…」

こんな先輩いたっけ、ということよりも疑問だったのは

「その、先輩はどうしたんですか。」

なんで、先輩が私に話しかけたかだ。毎朝通学路が同じという事ぐらいしか共通点の無い私に何の用事があるんだろう。

「どうしたって、お前傘忘れてんだろ。 家の方向一緒だから送ってってやろうと思ったんだけど。」

私から聞いておいてなんだけど、今の私はそれどころじゃない。

「とりあえず、飴もらってもいいですか。」


「そんな腹へってたのか。」
と笑いながら先輩が渡してくれた雨は口の中でパチパチはぜて、まるで今日の天気のようだと思った。


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