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『君が居る一人暮らし』
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・・・・

 しかし、プロとはいっても、俺みたいな貧乏学生に霊媒師が雇えるわけがない。というか霊媒師って何だ、どこにいるんだ? 
 ちなみに、普通に不動産屋さんに相談しようとしたら、優さんに止められた。一応この部屋、優さんが亡くなってから俺が入るまでの間に何度かお祓いしてもらっているんだそうな。その時いつも不動産屋さんが連れてくるのが近くの怪しい寺(?)の坊さんで、優さんの姿も見ることができないこの坊さんのおかげで中々ひどい目にあったらしく。「できれば痛いのは嫌だ」と泣きそうな顔で訴えてきたので、俺でも何とか頼めそうだった不動産屋とそのお寺が、早くも候補から消えてしまった。
 親とかには心配かけたくないし、あと俺が幽霊アパートに住んでるって噂になったりするのも嫌だから、あんまり周りの奴らにも相談できない。

「何、いきなり霊能力者とか言い出して。お前のアパート、もしかして、出るわけ?」

 ……山口は、見た目はチャラいけど、案外真面目で口が堅い男だ。西先輩や箕田と違って。

「いや、俺じゃなくて、俺の知り合いが困ってるんだ」

 でもやっぱり本当のことは言いたくないな。まぁ、優さんが困ってるんだから、全く嘘でもないけど。

「マジで? ……いや、俺、霊能力者の友達とか居ないけど……。あ、でも、そうだな、理学部の1年にそれっぽいのが居るーって話はちょっと聞いたことあるかも」

 何と、同じ大学生。

「理学部1年の、名前は?」

 プロじゃないかもしれないけど、学生でしかも後輩だったら色々相談したり頼みやすいかも。

「名前までは知らないけど、ちょっと調べておくな。解ったら連絡してやる」

 山口くんはとてもいい奴です。

・・・・

 数日後。

「深沢さん……ですか?」

 理学部棟の前の、変な鳥の銅像?の側で立っていた俺に、声をかける男。

「ああ。てことは、君が、黒鋼(クロガネ)くん……?」

 あの後、山口から連絡があって、理学部1年の霊能力者(っぽい人)の名前を教えてもらった上に、会う約束まで取り付けてもらった。山口は本当に使える男である。
 黒鋼 龍司(クロガネ リュウジ)というらしいこの1年は、1年のクセに妙に大人びたというか、落ち着いた雰囲気の青年で、背も高く、一緒に歩くとうっかり俺の方が年下に見られそうだ。霊能力者(っぽい)というから、怪しげなオカルトオタクを想像していたのに、何だこいつ、カッコいいじゃねぇか。俺が目指しているモノトーンな着こなしが似合うクールな大人の男。……何か悔しい。

「……なるほど、微かに霊の匂いがうつっている。長い間、霊の居る場所にいましたね?」

 切れ長の目で見つめられ、何だか色々見透かされているような気分になって、ゾクッとした。

「でも、貴方に直接憑いているわけではないので、その場所に行かなければ問題ないですよ。……まぁ、行ったとしても、悪い霊でもないみたいだし」

「あっと、その……相談したいのは、俺のことじゃなくて、」

 俺が言うと、それまでずっと無表情だった黒鋼くんが、初めて小さく笑って、頷いた。

「……時々、いるんですよね。仲良くなってしまった霊のために、何とかしてあげたいっていう優しい人が」
 
 その言葉に、俺は、迷わず彼を家に呼ぶことにした。


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