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『君が居る一人暮らし』
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「深沢〜、どーよ、新居は?」

 眠い朝イチの言語学概論の講義の後、学食の前を歩いている俺に声をかけてきたこの男は、山口。
 学部は違うが、ついこの間まで俺が入っていた寮の、同じ棟でフロアも一緒、さらに同学年ということもあり何かと仲良くしてきた。

 三週間くらい前から、俺がアパートを借り寮を出てしまったので、そういえば最近あまり顔を見てなかったのを思い出す。

「寮とは全然違うだろ? 彼女とかも連れ込んだりできるしな!」

「……それはありえんな」

 アパートの部屋を思い浮かべながら独り言のようにつぶやく。

「何だよ〜。……ま、彼女いないってのは知ってるけどさ☆」
「うるさい、」

 あのアパート、どーよもこーよもない。
 築2年で丈夫な造り、大学から近く、月3万円は安い!と思ったら、……とんでもない訳あり物件だった。

 ……あの部屋、「出る」んです。

 何って、幽霊。

 本物だ。

 一年前に亡くなるまでその部屋に住んでいたらしい、田盛 優という男の霊。享年24才。

 それが俺の部屋に出る。出るというか、居る。もうずっと居る。寝ても覚めても居る。四六時中居る。
 超ウザイ。彼女とかいたとしても絶対呼べない。呼びたくない。

 そりゃ、始めは幽霊がいるって解った途端びっくりして、恐ろしいなんてもんじゃなかったけど(恥ずかしながら、何度か気を失いました)、人間慣れれば平気なようで、一週間程で彼への印象が「怖い」→「ウザイ」に変わりました。

 変にユルくて気の抜けるような彼の性格も、あんまり怖くない一因なんだけど。

「ま、落ち着いたらいつか招待しろよな〜」

「ああ、いつか……」

 田盛優が成仏したらな。

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あきゅろす。
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