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『君が居る一人暮らし』
5
 
「え……」

 優さんが、大人しくなって、空気がシンとする。
 
『優さんが早く成仏しますように  真理』

 ……シャレのつもりだったんだけど、……何、この反応。もしかして、傷つけた、か……?

 ぅ……改めて見たら、酷いかもしれない。いかにも「迷惑だから、早くいなくなれ」みたいな……。いや、実際に迷惑なんだけど、そういう風に真剣に捉えられると、違うっていうか……。別に優さんを傷つけたいわけじゃなくて、

「真理くん、ありがとう……」

 え? ……ありがとう?

 優さんが、俺の背中に頭を乗せる。

「まさか俺のために願い事してくれるなんて思わなかったから……」

 ……何か、いいように解釈してくれたらしい。
 良かった……けど、ちょっと罪悪感。……ごめん、優さんのためというより、自分のためでした。

「あ、俺も真理くんのこと書いたんだよん!」

 真面目に礼を言ったことの照れ隠しか、既に笹にくくりつけた優さんの短冊を俺の目の前でチラチラさせる。……ウザッ。

「……俺のことって、何書いたんですか、」

 揺れる紙切れを捕まえて、書かれた文字を読む。

『真理ちゃんが幸せになりますように  優』

 ……コメントしづらいよ。何真面目に書いてんだよ。

「俺、幽霊だから自分の願い事したってしょうがないと思って真理くんのこと書いたのに、真理くんがあんな願い事書くから……本当、ビックリした。嬉しかった、ありがとう」

 う……俺には優さんにお礼言われる資格はない……

「……あれ、何、真理くんお酒買ってきたの?」

 買い物の袋を見て、優さんが首を傾げる。

「……珍しい。真理くんはお酒よりお菓子派だと思ってた。しかも昨日も飲んできてたのに……」

 その通り、俺は酒より菓子が好きな甘党だ。……でも今日は、理由があって。

「ほら、前に家でゼミの人たちと飲んだとき、優さんに飲ませてあげられなかったから。少しだけど今日は一緒に飲もうと思って」

「嘘っ……なんで今日はそんなに優しいの、真理くん?」

 失礼な、いつもは優しくないみたいな言い方しやがって……。確かに優しくないけど。
 ……今日は、朝あんなこと思い出したついでに、あのとき優さんに寂しい思いさせたのを思い出したから。

「……でも真理くん、酔っ払うとキス魔になるしなー……」

「なっ……!」

「……覚えてないでしょ、あのとき、真理くんにちゅーされちゃったのよ、俺」

 バカヤロウ、覚えてるよ! 蒸し返すな!

「一緒に飲んで、またちゅーされたらどうしよう〜」

 イヤン、と頬を両手で押さえてクネクネしている。何かムカつく。

「誰がするかっ、キモいっつーの」

 1〜2缶くらいじゃ俺も平気だろーし。……多分。

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