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『君が居る一人暮らし』
3

 寝てる間に、死んだんだ。

 いつも通り、寝て、……

 ……そりゃ、死んだ気になれなくて、出てきちゃったり、するよな……

「最近、真理くん、色々ズボラになってきてるから、注意しようと思ってたんだよね。窓の鍵とか、ガスの元栓とか、ずっと開けっ放しだろ」

 ……確かに。最近は自分で閉めた記憶がない。むしろ今日なんて、玄関の鍵も閉めてない。

「……俺が居るから、てのもあるかもしれないけどさ、一応、一人暮しなんだから」

 寝る前と、出かける時くらいは、自分でちゃんと確認しようよ、

 と、ちょっと悲しそうな顔で言われた。
 心配してくれてるんだ。自分みたいなことにならないように、って。

「わかりました。……ごめんなさい」

 俺が反省してると、優さんはニッコリ微笑んで、

「よし! わかってくれたならOK!」

 いーこいーこ、と俺の頭を撫でた。……ヤメロ、恥ずかしい。と一応心の中でツッコンでみるが、実を言うと、優さんに頭撫でられるのは、そんなに嫌じゃなかったりするから……困る。

「さて、そんな良い子の真理ちゃんに、優さんがこんなものを用意してあげました!」

 優さんが、茶卓の下から、一枚の紙(カレンダーの裏紙のようだ)を取り出した。

「何だこれ、『指差確認表』?」

 そのカレンダーの裏紙には、「外出・就寝時 必ず確認」と大きく書かれていて、その下に、ガスの元栓や玄関の施錠、テレビ・電気・冷蔵庫等、チェック項目が並んでいた。……意外に達筆。

「そう、目立つところに貼って、寝る前・出かける前にこれを見て指差確認するクセをつけてね!」

 なるほど。基本的なことだけど、大事だよな、うん。

「……ありがとうございます……でもこの1番下に小さく書かれてる『優さん』て何だ?」

 優さんの存在をチェックしろってことだろうか。そんなのチェックしなくても居たり居なかったりしたらすぐわかる。

「ん? やだなぁ、寝る前と出かける前の『優さん』っていったらあれだよ、あ・れ」

 何だよ。

「行ってきますとおやすみのチュー♪」

 ……アホは無視して、そばにあったハサミで『優さん』の部分を切り取り、表を玄関の目立つところに貼る。

「ああっ!何で『優さん』切るの〜」

 ヒドイ、ヒドイわ、と言いながら、ヨヨヨと泣き崩れる優さんがウザイ。仕方ないので、切り取った『優さん』をウェルカムレトリバーの裏に貼付ける。
 
「?」

「……まだ名前付けてなかったし。今日からコイツの名前、優さん2号にしますよ。それで許して下さい」

 玄関から戻った俺を不思議そうに見上げる仕草が、ちょっと似ていて、……うっかり癒されてしまったのは一生の不覚。


<END>

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