『剣斬!』 参 「! これは、あまり、おだやかではないような…」 殺気立っている山賊達を見て、浪人風の男の目がようやく真剣になる。 「お侍さん、そこどきな」 「………否」 浪人風の男は、山賊達から美女を隠すように立ち、そっと手で、逃げるように合図をした。 美女は、軽く頭を下げ、男をたてに山賊達から遠ざかった。 「おい、逃がすな」 美女を追おうとする山賊達の行く手を、男が阻む。 「待ちなさい、か弱い女性に乱暴は良くない」 「邪魔すんのか」 山賊達が揃って差し物を抜く。同時に男も刀を構える。 美女は、少し離れたところで振り向き、少しの間様子を見守ることにした。 ・・・・ 「よ…弱っ、」 浪人風の男は、山賊三人を相手に、かなりの劣勢だった。 美女は、男が心配になり、立ち去るに立ち去れなくなる。 「おかしいな…彼の目に、確かに強い剣気をみとめたから頼ったものを…」 強いどころか、剣の使い方がまるでド素人である。 これでは、男に「死んでくれ」と頼んだようなものだ。いかにも寝覚めが悪い。 「!! 御仁、後ろっ!」 スキだらけの男の背後から、今にも斬りかかろうとする山賊の一人を見つけ、思わず叫ぶ美女。 声に反応した男が、間一髪で振り向き、山賊の剣把を跳ね返す。 男の反応と動きの良さに、これはイケると思った美女は、すぐに次の指示を出した。 「そのまま振り下ろす!」 美女の言葉通り男が刀を振り下ろすと、峰が山賊の脳天に直撃し、一人片付く。 「右! 一文字! 下がって! 後ろ、突く!」 美女の声に従い動く男の剣が、山賊達をあっという間に倒してゆく。 [前へ][次へ] [戻る] |