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『剣斬!』

 
「…ところで、仙さん、今後のことなんですが…」

 ”みゆ”が、改まった様子で仙助に話を切り出す。

「房丸殿の旅装も整えたいので、私は一端、江戸に戻ろうかと思います」

 仙助が、あっ、と思い出したように手を打った。

「そうそう、そうだ。ああ、でも、そういうことならちょうどいいや。
 いやね、先頃、伊助の旦那のお使いが走って来てゃしてね、発ったばかりにすみませんがすぐに江戸へお戻り下さい、ってぇ伝言を預りましてね」

「そうなんですか、何かあったのでしょうか?」

「…しつこい”お客さん”が来てるんだそうですよ。戻ってくるまで居座る!なぁんて言ってるそうです」

「…そうですか。じゃあどっちにしろ、江戸に戻らないと、か」

「へィ。
 …すみませんが、あっしは仕事があるんで、このまま西に向かいやす。お荷物は、どうしやしょうか? 江戸に送り返しておいた方がいいですかねぃ?」

「いえ、ちょうど今、受け取ろうと思っていたところです。運んで頂いて、ありがとうございました」

 みゆが礼を言って、仙助から何かの風呂敷包みと刀を受け取った。

 その様子を側で見ていた房丸が、遠慮がちに”みゆ”に声をかける。

「あの、よかったら、お荷物、お持ちします」

 房丸的に、か弱い女性に荷物を持たせて、自分が手ぶらでいるのは、何だか落ち着かない感じがしたのだ。

「え? …いいのですよ、房丸殿は私の奉公人ではなく用心棒なのですから」

「でも、重そうですし…」

「これくらい、平気です。…でも…そうですね、そんなにおっしゃるなら、これを、」

 と、”みゆ”は刀を房丸に渡した。

「房丸殿に差し上げます」

「、………………ええっ!? いえ、あのっ、そういうつもりでは…」

 慌てて刀を返そうとする房丸。

「元々、宿に戻ってから差し上げるつもりだったので、お渡しするのが早くなっただけです。お気になさらず」

「い、いただけません! こんな上等な物…」

「いえいえ、特に名もない普通の脇差しですよ。房丸殿のお持ちの物を鍛え直すまでの代わりにお使い下さい」

 房丸の刀は、大分年期が入っていて、錆や刃こぼれが酷かった。それでは万一の時に自分を守れないから、と”みゆ”は返された刀をもう一度房丸に押し戻した。仙助も、そういうことなら遠慮なくもらっておけばいい、と房丸に勧める。

 納得したような、それでもやはり気になるような、複雑な顔で、房丸は刀を受け取り腰に差した。

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あきゅろす。
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