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『魔王に就職』
魔王の一日 《2》

 さて、そうやって着替えが終わったころ、ナウラスが部屋へ来る。

「おはようございます、アズマ様」

「ナウラス、おはよう」

 俺より若干年上に見えるナウラスにタメ口きく(彼の希望なので)のも、最初は変なカンジだったが慣れてしまった。

 相変わらずイケメンなナウラスは、相変わらずひかえめな笑みを浮かべながらゆったりとした動作で俺の前に来ると、

「失礼します」

 と、俺の両肩に手を置く。
 キュッ、とわずかに力を込められ、一瞬だけ全身がジン、と熱くなる。

「……では、行きましょう」

 ナウラスが先に立ち、連れだって部屋から出る。玉座がある魔王の間で、これから朝礼が始まるのだ。
 今、ナウラスが俺の肩に触れたのは、魔法をかけるため。朝礼には城内の強弱様々の魔物たちが集まる。ナウラスが傍にいるし、まさか恐れ多い魔王の間で暴れ出す者はいないだろうが、万が一の時のために、毎朝小さな結界魔法を俺にかけてくれる。
 魔物の中でも、理性のないモンスターなんかは、自分より弱い人間を見ると何も考えずに襲ってしまうらしいからな。

 玉座のある魔王の間は、俺の寝室等居住スペースのある最上階フロアの1階下にあるので、階段を下りて行かなければならない。この階段から先は、ちょっと最上階とは雰囲気が変わってくる。空気も少し冷たい気がして、ローブのフードを深目に被り直す。
 最上階フロアにいる間はついついのんびり優雅な気分になってしまうが、一応、恐怖の魔王城なんだよね、ここ。

 この城へ来てすぐ、ナウラスの案内で1回だけ城内を見て回ったけど、強そうなモンスターや危険な罠がたくさんあり、いかにも魔王の城、というようなおもむきだった。地下を含むと7階建てで、地上から階を上がるごとにモンスターのレベルや罠の数が上がっていく。最上階には罠はなく俺の身の回りの世話をするあの弱い小魔物たちしかいないが、そこにたどり着くまでの階段にはナウラスによって強力な結界が張られていて、外部からの侵入者はもちろん、城内のモンスターの侵入をも拒んでいる。城内最強とされるナウラスを倒さないかぎり、結界は破れない。

 もちろんナウラス本人は結界を自由に越えられるので、最上階と階下の行き来は自由。ちなみに俺も一応、魔王だからってことで、証の指輪があれば自由に通れることになっている。

 階段を降り魔王の間に着くと、ナウラスの先導で玉座に腰掛ける。玉座は何故か石造りで、固くて冷たくて正直坐り心地は悪い。前の魔王は尻の肉どんだけ厚かったんだろうか。座布団敷きたいけど、何かこれ以上魔王イメージ壊すのも申し訳ない気がして、我慢している。どうせ長時間は座ってないし。

 俺が玉座につくと、魔王の間に集まっている城内の魔物たちが一斉に頭を下げる。俺は右手を前に出し、魔物たちの頭上を撫でるようにすっと横にすべらせる。これが朝の挨拶代わり。
 そして朝礼が始まる。言葉を話せる上位クラスの魔物が、昨日1日の城内の各フロアごとの変動報告をし、今日1日の予定を述べる。毎日あまり代わり映えのしない内容で、魔王城は平和が続いているようだ。
 約15〜20分程で朝礼は終わり、ナウラスに背後を守られながら俺は最上階に帰っていく。

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