『魔王に就職』 孵化の条件《14》 「ええっ兄さん、ユゲ先生のところに行くの?無理よ」 と、突然、可愛い声再び。 「……! メディー、部屋を出たのではなかったか? 盗み聞きなど、はしたない…… ……申し訳ない、話しを聞かれていたようだ」 入り口から、出ていったばかりのメディーちゃん……若いので「ちゃん」で。……が入って来る。別にセレアの妹さんなら聞かれても構わない話だけど。セレアはメディーちゃんの素行の奔放さを気にしているみたい。ペロッと舌を出して可愛く謝ったメディーちゃんに頭を抱えている。 「だって、ユゲ先生、男嫌いだもの。兄さん達が行っても相手にしてもらえないと思う」 あらら、それは困ったな。 「そうなのか? ……では、メディー、そなたが……」 「! えーっ、やだっ、兄さんひどい、わたしまだ結婚前なのに、あんなところ出入りして変な噂立ったらどうするのよ」 産科みたいなとこかな。 「では、どうするか……」 メディーちゃんはニコッと太陽スマイルを見せた。 「わたしにいい考えがあるんだけど……」 ・・・・ 「……他に方法はないんでしょうか……」 「いや、俺はこれが1番いい方法だと思う!メディーさんナイスアイデア!」 メディーちゃんの考えとは、 「……アズマ様は面白がっているだけでしょう?」 ナウラスを女装させて、ユゲ先生という男嫌いの産婆さんのところへ送り込むことだった。 「いやいや、だって代理立てても、ちゃんと状況説明できるかわかんないし、相談者はナウラスが1番適任なんだってば。女装も絶対似合うし、大丈夫、バレないって」 超面白がってますが、何か? 「そうそう、絶対似合いますよ! わたしの服とか貸すしメイクもします! 絶っ対、超美人になる! ねー、魔王アズマ殿」 「ねー」 俺、メディーちゃん好きだわ〜。 「……セレア殿、」 俺は駄目だと諦めたナウラスが、今度はセレアに助けを求める。 「竜人族は女性も背が高い者が多いから、ナウラス殿が女装してもそう不自然ではないかもしれないな……」 ナウラスの運命は決まった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |