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『魔王に就職』
孵化の条件《12》
 
 セレアの屋敷で、応接室に通された俺とナウラスは、セレアの向かいに並んで座る。
 広い部屋に、椅子やソファ、テーブル等はなく、厚い絨毯の上に更にフカフカのクッションのようなものを敷いて座らされた。

 間もなく、部屋の入り口から、背の高い女性が大きな盆にコーヒーのような香りのする飲み物を乗せて運んできた。頭の角は小さいが、鱗のうっすら生えた褐色の肌と、三編みに束ねて肩に流してあるコシのありそうな黒い髪、背中の翼はセレアと一緒。どうやら竜人族の女性らしい。……女性、だよな? ……胸は小さいというかほとんどないみたいだけど全体的に柔らかいシルエットだし、薄いけど化粧してるし、物腰も女の人だし、コーヒー出してくれた手も女の人の手。
 もしかして、セレアの奥さんだったりして。

「……わたしの顔に、何か?」

 あんまりジロジロ見つめていたので、奥さん(?)が困ったように苦笑する。ヤバイ、俺、今明らかに失礼だったな。

「! ごめんなさい、……綺麗な方だな〜と、つい……」

 わー、どこの軟派男だ、俺。

 自分の言動に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。

「うふふ、ありがとうございます。でも、お隣りにわたしよりもよっぽどお綺麗な方がいらっしゃるのに、よそ見なんかしては怒られますよー?」

 楽しそうにクスクス笑いながら、彼女はナウラスに目を向ける。つられて、俺も横を向く。

「! ……」

 俺と目が合い、慌てて逸らすナウラス。まー確かに綺麗だけど、ナウラス男だしなー。たまには女の子ででも目の保養しなくちゃ……って、あれあれ? 嘘、ナウラス、微妙にちょっと拗ねてない? 気のせいかな。マジで妬いてたりしたら面白いんだけど。普通の男だったら引くけど、ナウラスだから何か可愛い。

「やだなー、ナウラスが1番に決まってるじゃないか、心配すんなよ、」

 と、つい、城に居るときのノリでからかってしまった。

「な、また、ご冗談を……!」

 予想を裏切らず真っ赤になるナウラスが実に可愛い。

「うふふふ、お仲がよろしいんですね!」

 奥さん(?)が太陽の微笑み。大人っぽい美人だけど、笑うと少女のようだ。意外に若いのかも。

「メディー、客人の前では少し慎め」

 セレアが苦虫をかみつぶしたような顔をして、奥さん(?)……メディーさんというらしい……に制止の言葉をかけた。
 するとメディーさんは頬をプッと膨らませて、

「兄さん古い。今時、女性も誰の前でだって笑った顔くらい見せるわよ。ねー、お客様」

 突然同意を求められて、反射的にコクコクと頷く。

 てゆーか、……

「に……兄さん?」

 メディーさんって、セレアの妹さん?

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あきゅろす。
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