『魔王に就職』
孵化の条件《8》
先程までとは全然違う速度に、振り落とされないように、改めてしっかりとナウラスにしがみつく。
「!!」
「! え、わぁーーっっ!!」
は、速い、これなら1時間くらいで着くかも! ……って、速いだけならいいけど、何だこれ、めっちゃ飛龍暴れてねぇ?!
真っ直ぐ飛んでないんですけど!
「ひぃー! やっ、ぅうわー! わーわーっ!? ナウ、ナウラス! ちょっ……」
ジェットコースター。
最近乗ってなかったな〜。中学まではどっちかというと好きな方だったけど、年取るごとに何故か苦手になってあまり乗らなくなってた。彼女いた時は仕方なく乗ったりしてたけど、実は怖くて嫌だったんだよなー……。
「ぎゃーーっ!!! うわぁーっ! やだ、やだ、嫌っ、ナウラス! イヤあああっ!!」
安全ベルトもない飛龍の上で、大きく空中回転とか、スクリュー回転されては、情けない声も出るってもんだ。
「!! すっ、すみません! すみません!」
ナウラスが、手綱をおさえる。
すると、飛龍の暴れが収まった。速度は落ちないが、今度は真っ直ぐ飛んでくれたので、ようやくホッとした。
「……すみません、途中からボーッとして操縦を忘れてしまいました……大丈夫でしたか?」
だ、大丈夫なわけないだろ! 何だよ、操縦を忘れるって! ハンドルはしっかり握っとけ!
「し、死ぬかと思った……」
めったにない外出だから楽しみだったのに、これじゃ城で留守番してた方がいいとか思ってしまった。
「す、すみません……気をつけます」
反省した様子のナウラス。
それからは、途中何度かグラッとしたところもあったが、何とか真っ直ぐ飛んでいた。
・・・・
「そろそろ到着します」
いつの間にか、周りの景色は山岳地帯。連なる山々は、切り立つ頂に雪を被っていて、旅行パンフレットなんかで見るアルプスとかどっかの山並みっぽい。
「わー、壮観。山、カッコイイ。秘境って感じ」
「そうですね。この辺りは高くて険しい山が多いので、人間はあまり寄り付きません。魔物も、このような不便なところには竜人族のような有翼種しか住まないので、集落のあるところ以外、山自体はほとん手付かずなんです」
ナウラスの説明を聞きながら、勇壮にそびえ立つ山々を眺める。その迫力のある構えや、気取らない落ち着いた雰囲気が、セレアに似てる気がした。
「あ、あの辺、何か建物がいっぱいある」
山の中腹辺りに、サイロのような、石造りの小さな塔型の建物がいくつも建っていた。
「あれが竜人族の集落ですよ。一番奥にある大きな建物が、セレア殿の住まいです。あの庭に降りましょう、」
ナウラスが飛龍の高度を下げはじめた。
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