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『魔王に就職』
孵化の条件《4》
 
「……すみません。ただ、貴方にもしものことがあったら、と思うと……」

 はぁ……、と力無く息を吐いて、視線を落とす。

「うん……ありがと」

 嬉しいんだよな、そういう気持ちは。肩に置いた手に力を入れ、ギュッと掴みながら、感謝を伝えた。

「……。とにかく、今回はご無事で良かった……。しかし、私の留守の度にこういうことがあっては、不安で仕方ありません。もう、しばらく外出は控えようかと……」

 わー……留守番もまともにできない魔王に成り下がってしまったよ。子どもより悪い。

「明日の予定も変更して、しばらくはアズマ様のお側に……」

「明日? ……え、大丈夫なの、ドタキャンとか」

 明日、ナウラスは竜人族の集落に出かける予定がある。公務で。
 ……卵が、あの次期魔王が入っている竜人の卵が、あれからウンともスンともしなくなって、耳を寄せてみたら一応鼓動のようなものはあるので生きてはいると思うんだけど、このままでは心配なので相談に行く予定だったのだ。
 セレアの方とは連絡がついていて、お産と子育てに詳しい人物に引き合わせてもらう手筈になっている。

「マズイんじゃないの、そんな、たかが俺のために向こうの予定まで変えるなんて?」

「たかが、じゃありません」

「……いや、有り難いけどさ、やっぱ良くないよ……明日は行ってきて。何より卵も心配だし、」

 ね? と、ナウラスを覗き込む。「う……」と詰まったナウラスが、仕方ない、というように、大きなため息。

「……では、一緒に行きませんか、竜人族の集落まで?」

「え?」

 俺も?

「……明日はリッゼも一緒ですし、今のところ竜人族の集落は比較的落ち着いていて治安もそこまで悪くない。もし危険があっても、私の命に代えてお守りします。離れた場所では、何かあっても守れない、それに比べれば……」

 えーっ、何それ、嬉しいんだけど! 竜人族の集落、行ってみたいし。やったっ、ラッキー。

「本当? 行く行く! 俺も一緒に行きたい!」

 かくして、俺たちは竜人族の集落へと行くことになった。

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