『魔王に就職』 西の館のツンデレナイト《8》 「やはり大事なコレクションのようですね。解りますよ、ボクも結構、貴方と趣味が一緒なので」 ベロリ、と頬を舐められた。 ひえええぇ……キモー! しかも何かこの人を挑発する感じ、やっぱこいつキース系だ! いや、キースより悪い! だってキモいし! 「袋の中のものと、どっちが大事なんですかねぇ……?」 キモキラの人は、俺を捕まえているのと反対の手を、何やら魔法を使って鋭い氷の塊で覆った。そしてそれをスッと持ち上げ、俺の喉に刺す直前の位置で止める。 「チッ……」 エンダリオの顔に焦りに似た苛立ちの色が浮かぶ。ゴ、ゴメン……。俺、こんなんでも一応魔王だもんな。人質効果抜群だぜ。 俺を人質にとられ動けなくなったエンダリオの剣を、おっさんが斧で払って立ち上がる。そしてまた振りかぶり、攻撃に移った。 今度は軽く防ぐだけで反撃に出れず、劣勢のエンダリオ。その隙に、痩身の男は袋を持って外に出ていってしまった。 「ははっ、何だ、マジでそーなのか? 黒騎士のエンダリオは氷のナウラス一筋ってわけじゃなかったんだなぁ」 おっさんが、グハグハ、と下品に笑いながらエンダリオを攻める。 「グレートさん、ボクたちもそろそろ出ましょう、もうここに長居する必要はない」 尚も俺を捕えたまま、キモキラが応接室の入口へと移動する。 「待て、そいつは置いて行け!」 エンダリオが俺をキモキラから救うべく、バッと入口に身体を向けた。 「おっと、よそ見は禁物だぜ、エンダリオォ!!」 「!!!」 おっさんの斧が、エンダリオの脇腹にヒットした。血しぶきが応接室の壁や床を汚す。 「エンダリオっ!!!」 さーっと顔から色がなくなるのが自分でもわかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |