『魔王に就職』
勇者参上。《17》
・・・・
朝日と共に目覚めることが、もう身体に染み付いた習慣になっているらしい。窓から日が射しこむと、自然と、もう起きなくては、と、小魔物たちがベッドに近づく前に起きる準備を脳がしていることが多くなった。
「……、」
今日も、そう。窓から射し込む朝の光をベッドの天蓋の薄いカーテン越しに浴びて、小さく身じろぐ。やがて寝室のドアが開き、小魔物たちがやってくるはず……
「……アズマ様……?」
……あれ?
いつも目覚ましに小魔物がかけてくれるオルゴールの代わりに、聞き慣れた柔らかい声。
「アズマ、様、……アズマ様っ」
両手両足血行促進マッサージの代わりに、肩を強く揺り起こされる。
「……ん……、何、朝から……」
朝、ナウラスが起こしにくるなんて珍しい。何かあったんだろうか。
横になったまま、ウーンと伸びをしながら手で顔をこすり、目やにとヨダレの後を消す。
「アズマ様……よかった……」
そんな俺の手を強く握りしめ、ベッドのふちに顔をうずめるナウラス。
「何なんだよ…………」
起きぬけに、さっぱり訳がわからないぞ。
「よかった……アズマ様が、このまま目覚めなかったらどうしようかと……」
何だそりゃ、縁起でもない、と叱ってやろうと身を起こしたとき、はっ、とした。
そうだ、俺、罠の落とし穴に落ちたんだ……。途中から気を失ってそのあとどうなったか解らないけど。
「ナウラス、俺、落とし穴に……」
「……すみません、私が留守にしていたせいで……。一昨日、地下水路で見つけた時には息も止まっていたので心配いたしました…。昨日も一日中お眠りのままで……」
ナウラスの顔色が悪い。心なしかやつれている気もする。きっと、俺が起きるまでずっと心配してついててくれたんだろうなと思う。
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