『魔王に就職』
竜人の卵《7》
つまり、セレアは怒ってたんじゃなくて、俺のセクハラに堪えていたと。知らなかったとはいえ、なんと申し訳ない。
「すみません、また私がお話していなかったばっかりに……」
なんて、また謝ってるナウラスだけど、いや、普通、竜人族の性事情まで教えようとは思わないもんな。仕方ない、仕方ない。
「んーん、ナウラスは何も悪くないよ。ちゃんと止めてくれなかったエンダリオが悪い」
「なっ、俺はちゃんと……」
「ナウラスだけじゃなくて魔王の危機にも身体張ってくれよな。行くなーっ!て、ギューッとしがみ着いてくるとか」
うんうん、そんなエンダリオだったら、可愛いかも。
「……んなことしたら俺の命がないだろが……」
「え? 何て?」
エンダリオ、小声すぎて聞こえねーよ。
「……何でもない。
ナウラス様、それでは私もこれで」
「ああ、ありがとう。気をつけて帰りなさい」
エンダリオも帰っていった。
「ナウラス、ナウラス、」
エンダリオを階段まで見送って戻ってきたナウラスを呼び止める。
「はい、何ですか?」
卵の前に座り込み、先程のようにスリスリ撫でてみせる、俺。
「……。私は竜人族ではないので、そんなことしても効きませんよ」
と言葉では言っているナウラスだが、顔が真っ赤だ。相変わらずウブな男。新しいセクハラの方法を手に入れて、俺はご機嫌だ。
「ナウラスも、さ・わ・っ・て?」
人差し指でツツツ……と卵をなぜる。
恥ずかしくなって部屋から逃げてしまうと思っていたが、予想外に近づいてくるナウラス。
げっ、やばい、これは仕返しがくるかも。
ナウラスは卵を挟んで俺の向かい側に座った。そして卵に触れている俺の手を包むようにそっと握る。
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